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シリーズ 消費最前線『全農マークを信頼のマークへ』
消費者の口から生産現場へ

――台所から発想した商品開発で


森口 俊 (株)全農青果サービス社長

 包装加工からいくつかの品目での商品開発・仕入れ・取引先対応まで、JA全農の園芸直販事業の中核である全農生鮮食品集配センターの事業を支えているのが、(株)全農青果サービスだ。森口俊社長は、各センターと共存共栄していくために独自性を発揮して、守りではなく、商品戦略や新規事業・周辺事業で新たなことにもチャレンジしていきたいと語った。

◆各センターを支援する3つの事業を柱に

 ――全農青果サービスでは、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

森口 俊氏
(もりぐち・たかし)昭和21年京都府生まれ。神戸大学農学部卒業。昭和45年全販連(全農)大阪支所入会。58年東京生鮮食品集配センター野菜第二課長、61年同青果総合課長、平成5年本所園芸販売部市場販売課長、6年同総合課長、8年全農大田青果市場場長、11年本所大消費地販売推進部次長、14年(株)全農青果サービス代表取締役社長。

 森口 基本的には、各センターの事業を支援・応援し一体的に運営することですが、3つの柱があります。まず、いまは、施設を持たず外部委託していますが、当社はバナナの熟成加工から始まった会社で、各センターが量販店や生協に対応するための品揃え上で必要な青果物の輸入代行です。2つ目は、各センターの営業活動を受託して、いくつかの品目について産地開発・商品開発・仕入れ・取引先対応や販売を行っています。各センターの職員と同じ営業活動をしています。
 3つ目は、パッケージなど包装加工事業です。最近は、生協の共同購入のセット事業が増えています。生協の共同購入では個配が成長分野ですが、これに対応しています。個配は「お店の品揃えと同じ品物をお店の鮮度で家庭まで届けます」がキャッチフレーズになっていますから、アイテム数も100程度あり、4月から10月くらいまでは蓄冷剤を入れてセットしています。
 各センターと一体的にということと同時に、当社としての独自性をどんなところで発揮していけば、さらに各センターの繁栄と共存共栄できるかがいま一番考えなければいけない課題です。従来は、各センターが伸びれば当社も伸びるということでしたが、いまはそういう時代ではありませんから、当社自身で新規事業や周辺事業で新たなことにチャレンジして各センターの発展を応援していかなければいけないと思います。

◆包装加工事業でISO9001取得し取引先の信頼を

 ――包装加工事業の現状はどうですか。

 森口 一般の包装加工はバラ売りの増加やゴミ問題もあって、伸びは期待しにくい状況で、協力工場の集荷やコストダウンが課題です。セット事業を強化していますが、現在、3つの生協事業連合の仕事をしています。具体的には、直営の川口事業所がコープネットさんの、町田では全農大和センターの関係で当社が元請になり外部委託してユーコープさんの、そして戸田センターで生活クラブ生協さんのセット事業を行っています。生協さんとのセット事業を始めて2年ほど経ちますが、生協組合員さんの支援もあって順調に伸びてきています。

 ――個配対応では、アイテム数も多く、個々人の希望も違いますから、大変な作業ですね。

 森口 4ライン稼働している川口だけでパートが300人くらいいて、事前加工からセットまで夜中の12時、1時くらいまで作業をしていますね。

 ――今後も伸びていく事業とお考えですか。

 森口 関東周辺の生協が先行していて、西日本へも広がっていますので期待をしています。そして、これだけ本格的にセット事業を行っているところはありませんから伸びる可能性は高いと思っています。

 ――安全・安心ということでは、衛生面や品質保持などの対応はどう考えておられますか。

 森口 食品工場レベルを目標に直営の川口事業所でISO9001を取得することをめざしています。すでにマニュアル化と記録、理念の輪郭は描けていますので、15年度上期には取得できると思っています。これが取得できれば、包装加工事業ではまだ少ないと思いますから、これからこの事業を広げていくときにも、先進事例としてビジネスに活かしていきたいと思います。社員の励みになりますし、お取引先からの信頼も得られるのではないでしょうか。

◆青果センターを担うという気概をもって

 ――各センターからの受託営業ではどうですか。

森口 俊氏

 森口 厳しい経済情勢もあって全農の新規採用人数が少なくなり、各センターへ配属される人は毎年1名程度です。業務の一部をアウトソーシングしても、絶対的に必要な人員はありますし、年齢構成がいびつになって継続的な事業ができにくくなります。そこで、当社がパートナーシップとして必要な要員を育成して業務を受託することが不可欠になっています。そのために、毎年2〜3名づつの定期的な採用を始めており、安心して営業を任せてもらえる体制を整えていこうと考えています。

 ――青果物販売のプロを育成していくわけですね。

 森口 そうなればいいなと思いますね。安心・安全など今後、要求される「全農ならでは」といわれる部分への教育・研修や産地をリードし取引先にも提案していけるそういう社員像をつくりあげていきたいと考えています。そのためにも期待しているのが、新しくなった東京センターの仕組みです。

 ――東京センターは従来の市場では考えられないような新しいシステムですね。

 森口 従来の市場ではタブーだった在庫を持つこと。入出庫口が別になり効率的で合理的な動線になっていること。一連の仕組みがコンピュータ管理され、担当者の指示ですべてが動くようになっていることなど、30数年のセンター運営の全農の培ったノウハウを凝縮した素晴らしい施設になりましたから、従来よりももっと高度で安心・安全な商品を安定提供していける条件が整ったと思っていますのでね。それをどう活かした営業をしていくかですね。

 ――いずれは、東京センターの中核を担っていこうと…

 森口 機能分担からしてそうもいかないでしょうが、そういう気概をもっていくことは大事だと思いますね。

 ――青果物の輸入代行はいろいろ難しい問題がありますね。

 森口 例えば、バナナのない青果物売場は考えられませんから、国産農産物の売場を確保するための品揃えとして、また総合営業活動としてバナナは欠くことのできない商品です。日本では生産できませんしね。
 ただ、生産者団体がどこまで輸入農産物を扱うのか、というルールづくりは必要だと思います。それは数量とか価格だけではなく、その農産物の由緒由来を含めてですね。バナナでいえば、生協も低農薬とかエコロジーとか「こだわりバナナ」を追求していますが、当社も現地に行って、栽培体系や栽培方法・栽培履歴を確認して扱うとか、栽培方法をこちらから注文してつくってもらうことだと考えています。コストはかかりますけれどね…。

◆「4つのC」を中核に新たな事業へチャレンジ

 ――今後の事業で一番大事なことはなんでしょうか。

森口 俊氏

 森口 例えば、ゴボウとかフキでは、生産者は折れてはいけないとコストをかけて一所懸命商品づくりをしていますが、売場ではカット売りしなければ売れません。そういう売り場情報が生産現場に伝わっていないわけです。「みば」を大事にする昔の市場の感覚が残っています。そういう事例がたくさんあります。売り場情報を生産側にフィードバックする必要があると思います。
 今までは「売場へ行け」といっていましたが、これからは、もっと先の家庭の台所や外食の調理現場へ行ってまな板の上でゴボウや大根がどう調理されているのかを知り、そこから発想しなければいけないと考えています。「農場から食卓まで」といわれていますが、これからの商品開発は食卓や外食・中食の調理現場から発想していかなければダメではないかということです。いわば「消費者の口から生産現場へ」のトレーサビリティですね。いま国産ニンニクは2個や3個とかでパッケージしていますが、家庭での利用を考えると鱗片に分けて売価を安くした方がいいのではないかとかですね。そういう勉強を社員にさせたいですね。
 それから、産地育成という意味で、近郊農家による少量多品種生産にも挑戦したいと考えています。まだ都市近郊にも生産者の方がたくさんいますから、そういう人たちと話し合い、計画的に取り引きできるようにできればと思います。かつては、どのセンターでもそういう仕事をしていたわけですから…。

 ――顔の見える農産物ということは大事ですね。

 森口 素直な生協の人の話では、注意はしているが気掛かりなのは自分のところの産直商品の安全・安心だといいます。だから全農で産直・産地のアドバイスをしてくれないかとか、産直の監査をしてくれないかという話があります。農薬とか栽培方法については全農の専門部署の方が熟知していますから、そういう経験のあるOBでコンサルすることも事業化になり得るのではと思いますね。

 ――さまざまな可能性があり楽しみですね。

 森口 いま15年度からの中期3ヵ年計画を策定していますが、そのキャッチフレーズは、コミュニケーション(Cmmunication)、コンプライアンス(Compliance)、コストパフォーマンス(Cost performance)、チャレンジ(Challenge)の頭文字からとった「4つのC」です。この「4つのC」を中核にすえて、自分自身で考える社員になってもらい、守りではなく、新たな商品戦略や新規事業へ挑戦していきたいと考えています。 (2003.2.28)




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