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「地域マネジメント法人」打ち出す 農政改革特命チームの議論

新たな農山漁村対策としての「地域マネジメント法人」
総選挙をはさんで、どう議論が進展するか

 関係6大臣会合のもとに設置された農政改革特命チームは衆議院の解散、総選挙という情勢を受けて7月15日の会合で一時議論を中断した。
 自給率目標や生産調整のあり方などが焦点だが、夏をめどに中間とりまとめを行う予定は先送りされた。ただ、農政改革担当大臣の石破農相は今後議論が必要なものは残っているものの「一定の方向性を与えるものになった」(7月17日の定例会見)の認識を示し、そのひとつが新たな農山漁村政策だとしている。

◆地域政策で新機軸

 石破農相は17日の定例会見で農政改革特命チームの議論について「産業としての農業をどう考えるのかという議論」が行われたことと、同時に「地域をきちんとみようという方向で議論された」ことの2点を強調した。
 とくに農村政策については「国として地域の力をどう引き出すか」が打ち出されたと評価した。
 具体的には特命チーム会合に農水省が示した新たな農山漁村対策として打ち出した「地域マネジメント法人」の考え方である。
 高齢化、人口減少が多くの農山漁村で深刻化するなか集落機能が低下し、生活を維持する相互扶助的な活動も難しくなっているほか、農地などの地域資源の管理活動も行えなくなることが懸念されている。
 農水省はこうした事態を放置しておけば耕作放棄地が増大したり、里地里山が荒れて「その影響はいずれ下流の都市部に及ぶことは必至」としている。
 そのため農山漁村の集落での定住維持を支援するための、集落機能を補完する生活支援サービスや、地域資源を活用し地域に一定の収入をもたらすような機能を発揮するものとして「地域マネジメント法人」を国の支援で設立しようという考え方を打ち出した。

◆既存の組織を統括

 農水省の示した考え方では、地域には自治会やさまざまな協議会などが組織されていることから、新たな組織を作るより、既存の組織を含めた統括した組織づくりとするほうが効率的で効果的であるとしている。
 具体的には、小学校区程度の複数集落の範囲で「生活支援サービス」と地域資源活用など「環境保全活動」を行う法人創設を促進するとしている。
 法人の形態は、会社、NPO(特定非営利活動法人)、JA、一般社団法人など広く対象とし、国などの公的機関が認定する。
 イメージととして、農水省は広島県安芸高田市の「川根振興協議会」や、新潟県上越市の「雪のふるさと安塚」、京都府南丹市の「有限会社知井の里」などを挙げている。
 川根振興協議会は任意団体で集落数は19、人口580人が活動範囲。日用品の販売店、給油所の運営、特産加工品の開発などに取り組んでいる。
 雪のふるさと安塚はNPO法人として活動。11集落3200人の地域で家事援助や除雪、草刈りなどの有償ボランティア活動や、スクールバス運転、放課後児童クラブ運営などを行っている。
 京都の知井の里は、農作業受委託、農産物・加工品販売、生産・生活資材販売や、高齢者への配食サービスなどを行っている。
 
◆集落支援は国の役割

 農政改革特命チーム会合では、この地域マネジメント法人の考え方について「地域のことは地域に任せてよいのでは。農林水産省が関与すべきことか」、「農村集落がなぜ疲弊していったのか、その総括が必要だ」との指摘や、「農業所得を補完するという意味であれば、農業の多面的機能に対する支払いを充実させるべきではないか」といった意見が出された。
 これに対して農水省は、地方自らの努力で克服できない歪みが生じているとして、地域の自発的な取り組みを国が支援することは必要だと反論。また、中山間地域直接支払い制度や、農地・水・環境保全向上対策の交付金では農村問題の解決には不足しているとして新たな地域政策が必要になっていると強調した。
 今後の議論によってどこまで具体化されるかだが、生活支援サービスだけでなく観光も含めた地域産業創出などによる地域活性化で新規住民の定住化を図るねらいもある。また、既存組織を活用する点で、JAの事業としても視野に入れる議論も出てきそうだ。
 総選挙をはさんでどう議論が進展するか、注目される施策ではある。

(2009.07.27)