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最近の小売業界

食料品が支えるスーパーの売上げ
伸びているのはコンビニだけ

◆コンビニに逆転されたデパート  昨年末から今年始めにかけて、スーパーマーケット...

◆コンビニに逆転されたデパート

 昨年末から今年始めにかけて、スーパーマーケット(スーパー)の業界団体である日本チェーンストア協会、コンビニエンスストア(コンビニ)の団体である日本フランチャイズチェーン協会そしてデパートの全国百貨店協会から、20年の売上高などのデータが公表された。
 それによると、スーパーは19年の13兆9788億円から13兆2754億円へと7000億円強、デパートは7兆7052億円から7兆3813億円へ3200億円強も売上げが減少した。これに対してコンビには、タスポ導入の煩雑さを嫌った人たちがコンビニでタバコを購入するようになり、そのついでに飲料なども購入する「タスポ効果」もあって、19年の7兆3632億円から7兆8567億円へと5000億円近く売上げを伸ばし、ついにデパートの売上げを上回った。
 余談だが、タスポ導入で自動販売機によるタバコの売上げが激減したといわれるが、飲料関係もコンビニでタバコと一緒に買われるようになり自販機売上げが減少しているという。さらに昨年秋からの経済危機で工場が閉鎖されたりリストラが推し進められた影響で、工場などに設置されている自販機売上げが減少しこの方面に大きな影響がでているともいわれている。

◆10年間で売上げが2割落ち込んだスーパー

 スーパー、コンビニ、デパートという小売の3つの業態の売上動向を平成11年から昨年まで10年間でみても、コンビには毎年売上げを伸ばしているのに対して、他の2つの業態は毎年売上げを減少してきている。
 例えば、スーパーの場合、平成11年には16兆5964億円あった売上げが、昨年は13兆2754億円へと20%強も落ち込んでいる。デパートも11年には約9兆円あった売上げが昨年は7兆3814億円へと18%近くも落ち込んでいる。これに対してコンビには6兆円強から7兆8567億円へと約30%も売上げを伸ばしている。これを11年を100として各業態の売上げの推移をみたのが図1だ。
 コンビニは、既存店ベースでは19年までは前年対比でマイナスだが、新規店舗を展開することで全体としての売上げを伸ばしてきた。しかし、20年は5月以降、既存店でも前年比を上回る売上げをあげ、年間でみると既存店が4.5%アップ、全体で6.7%アップという結果になった。
 コンビニには年間132億8228万人が来店(前年比6.2%増)、客単価は591.5円(同0.5%増)となっている。また、売上構成を商品群別にみたのが図2だが、19年に比べて「非食品」の構成比が高くなっていることが分かる。売上げベースでみても、日配食品が前年対比1.8%、加工食品同2.1%、サービス同3.7%の伸びに対して非食品は同18.5%と2割近く伸びている。この傾向が21年にも続くのかが関心の的だといえる。

◆8兆円台を維持しているスーパーの食料品

 図1のなかに「スーパー食料品」という項目があり、ほぼ100の線上を推移している。これはスーパーにおける食料品の売上げが多少の増減はあってもほぼ同じ水準で推移していることを表している。図3は、スーパーの売上げとそのうちの食品の売上げおよびスーパー売上げに占める食品売上げのシェアをみたものだ。
 これをみると、スーパー全体の売上げは16兆円台から13兆円台に減少してきているが、食料品は14年を除いて8兆円台で推移していることが分かる。そのためスーパー全体の売上げに占める食料品のウェイトが高くなり、11年に売上げの18.4%を占めていた衣料品は20年には11.6%に後退し、食料品がスーパーの経営を支えているといえる状況になってきている。
 その食品の売上構成をみたのが図4だ。平成15年6月までは統計の仕方が異なるので、15年については7〜12月の合計となっている。農産品も含めて生鮮食料品は価格の変動があるため一概にはいえないが、このデータでみると農産品や惣菜のウェイトに大きな変化はないといえる。むしろ水産品のウェイトが毎年少しずつ下がってきていることが気になるといえる。

◆正念場迎えた小売業界
  低価格のツケは誰が負担するのか

 昨年秋から始った経済危機によって消費が低迷しているが、それが本格的に表れるのは今年からではないだろうか。そして「タポス効果」のついで買いだけではない客も増えているというコンビにでは、経済危機で「内食へ向かう需要を喚起する」と野菜や刺身などの生鮮品を積極的に取り扱うコンビニが増えてきている。さらにスーパーが中心だった洗剤なども扱うことで、若者だけではなく主婦層や高齢者層にも利用者層が広がってきているという。
 そうしたなかで、イトーヨーカ堂のセブン&アイグループでは、ディスカウントストアの展開を始め、規格外商品を通常商品よりも割安で販売するなど、低価格を前面に打ち出す店舗展開も始めた。また西友は自店より安い他店のチラシを持参すれば他店と同様の価格にするという電気店などの手法を取り入れるなど、各社とも顧客の囲い込みに必死だ。
 さらにインターネットを利用したネット販売に各社が積極的に取り組み始めるなど、冷え込む消費のなかでいかに需要を喚起し、消費につなげていくかこれからが小売業界の正念場といえる。
 だが、消費者が低価格を求めても、農産物も含めて商品を生産するコストは下がるわけではない。価格が下がって分は誰が負担するのだろうか。スーパーが負担するのか、それとも生産者やメーカーなのか。それぞれがそれなりに負担するのだろうが、それでは「デフレスパイラル」へ突入しますます危機を深めることになるではないだろうか。

図1

図2

図3

図4

(2009.02.19)