コラム

目明き千人

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【原田 康】
「直売所とTPP」

 TPP問題は、総理大臣がアメリカに行って帰ってくるとにわかに騒がしくなる。もう何度もお目にかかった景色である。

 TPP問題は、総理大臣がアメリカに行って帰ってくるとにわかに騒がしくなる。もう何度もお目にかかった景色である。今回は政府の他に経団連から新聞、NHKとメディアが総動員でTPPに乗り遅れると日本の経済がダメになるような騒ぎ方である。余程アメリカに圧力をかけられているのであろう。オバマさんは雇用を増やさないと大統領選挙に勝てないのでなりふりかまわずであるが、まずアメリカ内部で努力をして貰いたいものだ。それはともかく、TPPはアメリカ、オーストラリアの農業との競争となる。相手にするには不足は無いが少々手ごわい相手だ。農場が広いだけでなく、農産物の輸出には政府があの手この手を使って後押しをしているからだ。
 一方、身近なところを見ると相変わらず直売所が地域活性化でもてはやされている。
 日本の農業は直売所で元気になり、農協も地域に貢献する組織として評価されている。
 地産・地消の日本型のスロ?フード運動としては大いに意義があり、日本の農業を支えている女性の皆さんの収入源となっていることは大いに結構である。但し、農産物の販売、マーケティングの立場から見ると直売所は所詮抜け道である。
 広い産業道路、高速道路が整備されているから車がスムースに流れている。ラッシュ時の抜け道としては便利であるが産業道路にはならない。
 日本の農業が外国と競争をするのには産業道路、高速道路のようなメイン流通での勝負である。農協の共同販売、卸売市場がメインの流通である。
 日本の農畜産物の高品質を売り物にして輸出を拡大するには、金持ちをターゲットにイベント的な輸出をしても量は増えず長続きしない。マーケティング調査をしてそこの国の流通システムに合った経済ベースで輸出をするのには、生産、集荷、販売の各段階で品質と価格で競争の出来るような体制をつくることが必要となる。日本が売り込んでいる国のスーパーマーケットでは各国からの輸入品が売られている。品質と同時に価格が決め手である。品質は文句なしに競争力があるので価格である、目標を決めてコストを下げる工夫が不可欠である。政府の出番はここである。
 農協の販売事業はこのような国際競争に負けない力を持つことがTPPへの回答である。

(2011.11.01)