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【金右衛門】
アメリカ農業にひとこと

 アメリカ経済の減速が言われ、その影響が農業にも及ぶのではないと心配されている。...

 アメリカ経済の減速が言われ、その影響が農業にも及ぶのではないと心配されている。
インターネット上にアメリカからの記事が見つかり要訳した。
 とうもろこしは今年どれだけ作付けすればよいかアメリカの農家は迷っている。生産資材費は高いし、販売価格は安い。とうもろこしや小麦などアメリカ農家にとっての主要作物の作付けはマネー・ルージング・ゲーム(負けゲーム)に参加しているようなもの。常に政府の補助金を当てにしなければやっていけない。
 90年代を振り返るとカリフオルニア州のある西海岸とニューヨーク州などがある東海岸、両側が栄えてアメリカ大陸の心臓部に当たる中西部の経済は落ち込んだ。穀倉地帯の農業が音を立てて崩壊しているからだ。農産物価格の高かった96年の一年だけを除けば、この10年間は農家が生き残りを賭けて、模索してきた時代である。消費が旺盛でも、農産物価格は80年代とほぼ同水準である。生産は只では出来ない。80年代には多くの農家が離農した。統計上ここ2―3年は農家数は増えているようになっているが、数字の見せかけであり、農村人口は着実に減り続け、その傾向は現在でも続いている。アメリカの一般経済が落ち込めば、農業経済は今よりも更に窮地に追い込まれるのではないかと農家は恐れている。
 96年に成立したアメリカ農業の規制緩和に関する法律がある。「誰でも農家になれる」という主旨が、結果として、「誰でも農業で失敗できる」皮肉なことになった。今年は世界的な穀物過剰状態にある。干ばつ、立ち枯れ、水不足、それに石油、アンモニアなど生産資材のコスト高もあって、農家経済は困窮を極めている。政府は当初予想の2倍の財政支出をしても、アメリカ農業の健全化には追いつかない。
 99年度は90万戸、全農家の42%に当たる農家が政府から何らかの生活保護を受けているのではないかとも言われる。中西部の穀倉地帯カンサス州では97−99年の2年間、農家収入の75%は政府補助金だったとある農業アナリストは分析している。 それでも、最近の明るい出来事には、肉類、畜産の消費が伸びていることである。牛肉、豚肉の販売が増えたし、鶏肉の生産は過去最高だった。しかし、アメリカ経済が減速し、一般の人がレストランなどでの外食を減らし、ステーキのオーダーを控えたりすれば、たちまち畜産農家に影響の出てくることが心配される。
 昨年、農家収入の増えた北部地域モンタナ州、ミネソタ州、ダコタ州、ミシガン州などもある。その少し上がった価格でも80年代の値段と同じかそれ以下の水準で、政府補填金なしでは農業での利益は得られていない。
 アメリカ農業は困難な曲がり角にさしかかっている。このようなアメリカ農業の困難な状態では、ブッシュ新政権の農業保護政策は当然、政策としてアメリカの農産物輸出ドライブはかかってくる。WTOの農業交渉もスケジュ―ルにあり、日本人もしっかり日本農業の問題を考える必要があるのではないだろうか。今までどおり続けられるか、議会の農業法見直しの行方はどうなるだろうか。

(2001.03.05)