コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
民主党が政権公約を発表

 昨日、民主党は政権公約を発表し、農業の戸別所得補償制度の創設を公約した。2年前の参議院選挙で大勝した時には「年金」「子育て」と並んで「3つの約束」の1つだったが、今度はそれほどの大きな政策ではないようだ。やや気にかかることである。

 昨日、民主党は政権公約を発表した。農業の戸別所得補償制度、つまり販売農家を対象にして、販売価格が生産費を下回った場合、その差額を戸別に所得補償する制度をもり込んだ。1兆円の予算を使う大型な政策だ。その目的は農業を再生し、食糧自給率を向上させることだという。来年中に制度を設計し、再来年から実施するようだ。いくつかの問題がある。
 自民党と違って小規模な農家も対象にするというのだが、まだまだ不十分だ。販売農家だけに限定して対象にするようだが、それでは全農家のうちの59%の農家だけが対象になり、残りの41%の農家は補償されなくなってしまう。この問題点は前稿で述べたので、繰り返さない。
 また、価格が生産費を下回った場合に補償するというのだが、米などの主要な農産物についても価格は全面的に国際市場で決める、というのだろうか。一方で、アメリカと自由貿易協定を結び、貿易の自由化を進めるといっている。そうなると米などの価格は下がるだろう。価格が下がっても所得を補償するからいい、と考えているようだ。
 そうではなくて、価格が生産費を下回らないような、たとえば、米粉米などへの支援制度を、腰を据えて構築することこそが、自給率向上と農業再生の本筋ではないか。
 もう一つ、生産費をどのように計算するのだろうか。この問題も重大だ。市場価格と生産費を全く別なものと考えるのでは、市場が持っている優れた機能を無視することになる。
 そうではなくて、市場価格が生産費を下回らない制度にすることが重要で、それでも価格変動があれば、その対策として補償制度を作ればよいのではないか。
 来年の1年間をかけて制度を設計するようだが、充分な検討が必要だろう。本稿では問題点だけを指摘したが、次稿以後で詳しくこれらの問題を考えよう。

(前回 いよいよ総選挙だ、農政の対象は誰だ

(2009.07.28)