コラム

「正義派の農政論」

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【森島 賢】
米価1000円下落の衝撃

 先日、米の相対取引価格が発表された。またしても大幅な下落である。ついに昨年秋の米価と比べて1000円以上も下がった。このまま放置してよいのか。
 政府は、戸別所得補償制度で農家所得を補償するといっているが、このまま下がり続ければ、財源不足になり、補償しきれなくなる。
 新聞が伝えるところでは、この事態をみて、或る地方の農協中央会が、対策を要求したところ、農水省の高官は、米価の下落は自己責任だ、といって取り合わなかったそうだ。
 民主党政府は、米価の下落に危機感を持っていないようようにみえる。やがて戸別所得補償制度で需給が引き締まり、米価は回復するという見方を、今でも持っているのだろうか。米価が下がっても放置する方がいい、と考えているようにも思われる。
 これに対して、野党の自民党は、今の米価下落を危機的状態と考え、近く「米価緊急事態宣言」を出すようだ。公明党なども対策を要求している。

09年産米の相対取引価格 図で示したように、09年産の米価は昨年の秋から、つるべ落としのように下がり続けている。ちょうど民主党政府への信頼度の下がり方と同じように見える。
 昨年秋には、新しく政権交替した民主党政府の農政、ことに米政策に対する大きな期待があった。300万トンの棚上げ備蓄と、100万トンの米粉米生産、という大きな目標を掲げ、農業者だけでなく、食糧安保を願う多くの国民に期待を持たせた。米価も回復するかに見えた。
 しかし、その後、今になっても、これらの目標を実現するための具体的な施策を、何ひとつ行っていない。そして、米価は下がり続けている。これは、農業者の自己責任ではなく、政府の責任である。



 かりに今年の10年産の米価も、今の米価のままで続くと仮定したばあい、どうなるか。米の生産目標数量は813万トン、つまり1億3550万俵だから、これに米価の下落幅の1俵あたり1000円を掛け算すると1355億円になる。
 これを農家の側からみると、農家の売り上げ金額が、昨年秋に予定した金額よりも1355億円減る。また、政府の側からみると、補償金額が1355億円増える。今年の予算で予定した補償金額は3371億円だから、それと比べて大幅な増加になる。
 この試算は、今後の米価が今の米価よりも下がらない、という仮定のもとでの試算である。かりに、米価の下落が今後も続き、今の米価よりも下がると仮定すれば、この金額は、もっと増える。そして、やがて財源不足という理由で、戸別所得補償制度は崩壊するだろう。



 どうすれば良いか。米価を回復するしかない。それには300万トンの棚上げ備蓄と、100万トンの米粉米生産という政権発足のときの目標の実現へ向けて、政府は米の緊急対策、つまり、棚上げ備蓄のための米の緊急買い上げを、早急に実施することである。
 多くの野党も、緊急買い上げに賛成するだろう。戸別所得補償制度の問題点を、与野党間で議論するのは、後でいい。緊急に実施することは、緊急買い上げによる米価回復である。与党の中でも賛成する人は少なくないだろう。
 こうした与野党間の政策協議は、ねじれ国会だからこそ出来る。そうした協議をどの党が発案するか。どの政党が熱心に協議し、柔軟に対応するか、国民は注目している。
 国会の委員会での協議でもいい。休会中に委員会を開き審議してもいい。国会外での協議でもいい。ともかく事態は緊迫している。
 こうした協議は、国民に開かれたものにし、透明なものにしなければならない。国民はどの政党の農政が信頼に足るものか、熱く注目している。


(前回 農政の与野党協議を急げ

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(2010.08.02)