コラム

吉武輝子のメッセージ JAの女性たちへ

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【吉武輝子】
女性こそ天性の平和外交官

 2007年11月9日(金)、有楽町朝日ホールで、吉岡しげ美さんの音楽詩30周年...

 2007年11月9日(金)、有楽町朝日ホールで、吉岡しげ美さんの音楽詩30周年記念のコンサートが開催される。コンサートのタイトルは「いま、私がここにいること」。
 吉岡しげ美さんは30年間、与謝野晶子、金子みすゞ、茨木のり子、岡本かの子、吉原幸子、新川和江、高良留美子、清少納言、万葉集など女性詩人の歌に曲をつけ、ただひたすら歌いつづけてきた。その数は5000曲。
 20代から50代の今日まで、彼女の心に染み込み、感性を鋭く揺さぶりつづけた女性詩人たちは、表現法は千差万別であっても、その底流には、命のいとおしみと平和への希求がみなぎっていた。
 1980年にスタートした「戦争への道を許さない女たちの連絡会」は偉い人を作らない平場システム。とりあえず今日まで、わたくしが顔の役を果たしてきたが、「連絡会」主催の、憲法記念日や敗戦、開戦記念日の集会で何度も、吉岡しげ美さんは、与謝野晶子の「君死にたもうことなかれ」や茨木のり子の「わたしがいちばん綺麗だったとき」や金子みすゞ著作保存会の「大漁」や「わたしと小鳥と鈴」を歌い上げ、女性詩人たちの命のいとおしみと平和への希求を、会場を埋め尽くした女性たちの心の中に注ぎ込んでくれる。
 時折タレントの山田邦子さんが、詩の朗読をして盛り上げてくれる。山田邦子さんは、政治色やイデオロギーとは関係のないまことに素朴な感覚で平和憲法を愛し、戦争のない世界の実現を夢見ている。その素朴さがひと人に、勇気と希望を与えている。
 実は吉岡しげ美さんも、山田邦子さんもわたくしも神楽坂女性合唱団の仲間であり、ガン友でもある。邦子さんは乳がんの初期で、放射線治療を終えたばかりである。しげ美さんは乳房温存の手術を終えたあと、かなり長期にわたって抗がん剤の治療を受け、一時期は毛が抜けてウイッグのお世話になっていたこともある。わたくしは直腸ガン。レベルは3期だが、遠隔転移がなかったので、抗がん剤治療を受けずにすんだ。
 しげ美さんは何かというと「ガン友、ガン友」と抱きついてきて「輝子、無理しちゃだめだよ」といいながら、自分は、病後美しさ満開の姿で、コンサートツァーのためにアジア諸国を駆け回っている。ことに韓国、中国でのコンサートには全力をあげている。かつて侵略した国々への国からの謝罪がすんだあとは、個人の平和外交の出番であると固く信じて生きてきたしげ美さんは、戦時中にも、命をいとおしみ、平和への希求を堂々と歌い上げた女性詩人の存在をアジアの人たちに伝え、歌を通して平和外交の担い手になろうと、病み上がりの身をものともせず、ひたがけに駆け回っている。そのしげ美さんの個人の平和外交こそが、戦争のない世界を作り上げるとの志を我が物とする女たちが応援団になって、しげ美さんの30周年の記念コンサートを成功させようと祈りを込めて頑張っている。もちろんわたくしも山田邦子さん応援団の一人。みんなの合言葉は「女は天性の平和外交官」。皆さんもお仲間に入りません?

(2007.09.28)