コラム

吉武輝子のメッセージ JAの女性たちへ

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【吉武輝子】
骨愛していますか

 もうびっくり、この1月の間に知人、友人、地域社会の方たちが、前期、後期高齢者が入り交じって肋骨やら大腿骨やらを折って、2か月近く入院してしまったのですから。怖いのは骨折はねたきりの始まり。でもわたくしの周辺の骨折者は、みなそれぞれ、まだやらなきゃならないことがある、としゃんと生きている人ばかりなので、手術して鉄棒を入れたおかげでむしろ筋金入りの高齢者に変貌してしまっている。

 もうびっくり、この1月の間に知人、友人、地域社会の方たちが、前期、後期高齢者が入り交じって肋骨やら大腿骨やらを折って、2か月近く入院してしまったのですから。怖いのは骨折はねたきりの始まり。でもわたくしの周辺の骨折者は、みなそれぞれ、まだやらなきゃならないことがある、としゃんと生きている人ばかりなので、手術して鉄棒を入れたおかげでむしろ筋金入りの高齢者に変貌してしまっている。
 9人の骨折者のうち3人は風呂場でつるり。1人は小料理屋さんの女主で水に濡れたタイル張りの台所でずでん。我が家の斜めに住んでいる86歳の先輩は、真夜中にトイレに行こうとしてスリッパのかたっぽだけはいて便器に座ったらつるりと滑って尾てい骨骨折。うめきながら寝室まで這っていって携帯電話で八王子に住む息子に連絡、明け方救急車で入院した。
 子宮癌の再発の手術をしたばかりなので泌尿器科のある病院を探すのが大変だったとか。彼女はこの3年ばかり癌の転移で3度も手術をしているが、帰宅すると背筋を伸ばして凛と生きている。かくありたいと思う理想の先輩だが、今も1日も早く帰宅したいと懸命にリハビリに励んでいられるそうだ。
 我が家の前のお茶の先生は、電車が大きく揺れて、車内で尻もちをつき大腿骨折。2月の稽古はお休みとなったが、4月の花の宴のお茶会にはぴしっと着物を着て正座で主人役をはっておられた。なんとリハビリの最初が正座だったのだとか。つらつらと見渡すと、何かやらねばならないと心に深く決め込んでいる人順に快復しているのを間のあたりにしていると、いかに高齢者になろうと自立心と自己表現を失ってはならないと改めて、人に役立って生きる最晩年の大切さを学ばされてしまう。
 ところが骨折者のほとんどが健康自慢。しかし、どんなに健康自慢でも加齢現象による骨量の減少は免れることはできない。
 実はわたくしは3年前に膠原病の親玉菌が肺の血液に入り危篤状態に陥ってしまった。命を助けるためには大量のステロイド投薬が必要。ステロイドは奇跡の薬と言われているが、ムーンフェイスと骨粗鬆症という最悪の副作用がある。わたくしは30年来膠原病で進行性の呼吸器障害に悩まされてきたが、ステロイド治療だけは拒否し続けてきた。しかしいつかはステロイド治療が必要になることは分かっていた。
 すかすかになった骨を支えるのは筋力しかない。それから転ばないようにバランス感覚を養わなければならない、と考え、6年前から部屋の隅に輝子ジムを作った。動かない自転車のペタルを朝晩600回ずつ。ツイストを200回。筋肉と腹筋を育てる器具を300回ずつ。それにバランスボール。6年も続けているとボールの上で座禅が組める。バランス感覚が鍛えられると段差で躓いてもおっとっと、と踏みとどまることができる。
 入院をしてナースが注射をするたびごとに「すごい、吉武さんには筋肉がある」と叫ぶ。ノリ屋のわたくしは拳を握って肘をぐいと曲げると隆々たる力こぶができる。
 JA女性のみなさんは人一倍身体を動かしているから筋肉ウーマンにはちがいないが、結構背中が丸くなっている人たちもお見かけする。人生100年時代ともなれば、取り替えのきかない体内の部品はとみに退化していく。骨はまさに体の芯。筋肉鍛えて、ヨーグルトうんとこさ食べて、小魚いっぱいいっぱい食べて、カルシウムを吸収するビタミンD入りの太陽をザンブとあびる。そして時々骨量を計ってもらってがっちりガード固めなくちゃ。わたくしムーンフェイスが治って骨量を計ってもらったけど、医者もびっくり。骨に栄養たっぷり、その上筋肉でサポートしてきたおかげで健康そのもの。
 ねぇ、努力すれば甲斐があるというもの。もっともっと骨を愛してあげてくださいな。それにバランス感覚も。

(2009.04.28)