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【ジャーナリスト】
堤 未果 氏

 市場原理の導入で食ビジネスに参入し利益を上げようとジャンクフードを大量に提供する巨大企業と、それによる肥満児童の急増、医療費の増大、そして格差拡大の悪循環・・・これらのアメリカで今、起きていることを描いた『ルポ貧困大国アメリカ』の著者・堤さんに市場原理主義の行き着く先を聞いた。

 最近、アメリカ法務省は史上最悪の貧困率だと、とうとう発表しました。本当に貧困大国になったと政府が公式に認めたということですね。
 アメリカはブレーキが壊れた市場原理主義が暴走しているのです。取材していて思うのは、市場化、日本で言う民営化ですが、これは一度やってしまうと勝手に動き出し、自分で加速していくということです。どこまでも効率良く、どこまでも利益を上げるように走り出し、終わりがありません。
 アメリカの後を追うように政権交代をし、1年たって同じように「あれ? おかしいな」という声がそこかしこで上がっている日本の私たちにとっても他人事ではない話ですね。
 アメリカでは「気づき」が始まっています。やはり民主主義というのはメンテナンスがいるしくみだとつくづく思います。「食」を通して社会を見ると本当に沢山の箇所に矛盾がみえるからです。日本も今まさに、メンテナンスをするいい機会ではないかと思います。

PROFILE
つつみ・みか
東京都生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士課程修了。国連婦人開発基金(UNIFEM)などを経て米国野村證券に勤務中に9.11同時多発テロに遭遇。以後ジャーナリストに。「ルポ・貧困大国アメリカ」(岩波新書)(08年日本エッセイストクラブ賞受賞等)。近く「アメリカ弱者革命」(新潮文庫)「もうひとつの核なき世界」(小学館)刊行予定。


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(2010.10.21)