man・人・woman

JAcom man・人・woman

一覧に戻る

【JAいわて中央農業協同組合理事、農事組合法人「となん」組合長】
熊谷 健一 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第35回農協人文化賞」営農事業部門受賞。
 受賞者のこれまでのあゆみを紹介する。

「結いの心」で理想郷を

◆目線と発想は農家に

 50年前に入組した時の上司の教えが私の農協運動の基本になっています。それは[1]目線と発想は農家に置き、話は専門用語で語るな[2]役職員は官僚化してはならない[3]農協職員は誰から給料をもらっているのか[4]農協は組織作りと地域貢献だ、などです。
 現在では、全国の農協が取組んでいる農協直売所に気づき実践したのは、昭和46年の秋です。当時、選果場に集荷した野菜やリンゴの規格外品は廃棄処分していました。「捨てるなら売ってほしい」との近隣の住民の方々に声をかけられ、選果場の下屋に戸板を並べて販売したところ予想を上回る販売実績となりました。
 この経験から昭和55年に資材店舗を改装して本格的な農協直売所をスタートさせ、順調に実績を伸ばしていきました。その後、より多くのお客様にご利用いただける直売所店舗計画を提案しましたが、理事会では否決されました。その理由は、「盛岡は冬が寒い。野菜がないから商売にならない」とのことでした。この問題を解決するために、私は、全国の農協と農産物交換交流事業を提案し、私たちのリンゴと全国の5つの農協の農産物との交換交流が実現、平成7年に「サン・フレッシュ都南」のオープンにこぎつけました。
 この農産物直売事業は、平成17年に農協事業改革の一環で、農協100%出資の「株式会社JAシンセラ」に移管されましたが、今日も、多くのお客さまにご利用いただいております。

◆地域あげて「特栽」

サン・フレッシュ都南 消費者の皆様に安全・安心な農産物を供給し、また、環境への負荷を低減する、特別栽培農産物は、現在、広く知られています。私どもでは、昭和55年の試験栽培を出発点に米とリンゴの特別栽培に取組んでおります。
 水稲は、部会役員が試験栽培を繰り返し、技術的な検討を重ねていきました。そのなかで平成5年は大冷害の年でした。この年は50haの試験栽培でしたが、慣行栽培の平均単収が約180kgだったのに対して、減化学肥料栽培では平均単収が約480kgとなりました。さらに技術的な検討を重ね、平成13年からは、都南地域が先行して特別栽培に地域すべての米農家が参加、平成15年からはJAいわて中央全域での取り組みに拡大しました。特別栽培米は、日本生協連などと契約販売となり、安定的な販売を実現しており、農家所得の向上に役立っております。
 一方、リンゴの特別栽培は非常に困難といわれていました。しかし、ヒントが昭和50年頃のリンゴ栽培にありました。当時は、年度当初に定めた県の防除暦どおりの防除で、実際に発生した病害虫とのズレを修正する仕組みがありませんでした。そこで、部会に病害虫発生予察員を置き、薬剤の変更や散布回数を減らしても効果的な防除を実施できないか検討を重ね、その結果、予察と適切な薬剤選択を行えば、リンゴでも特別栽培を実現できる道筋が見えてきました。
 平成16年から、リンゴ部会で本格的に特別栽培の取り組み、また、地域ごとにローテーションで特別栽培に取り組む体制を組み、より安定的な生産を実現できました。この取り組みは、全国の関係者から高く評価され、平成24年第41回日本農業賞集団組織の部で大賞を受賞しました。

(写真)
サン・フレッシュ都南

◆日本一の集落営農

 平成25年3月、盛岡市の都南地域全域をカバーする集落営農組織「都南地域営農組合」は、法人化し農事組合法人「となん」として再出発しました。960haもの面積をまとめることができたのは2つの要因がありました。 1つは、昭和48年にさかのぼります。当時の飯岡農協が自己資金でライスセンターを設置するのにあわせて、集落ごとに2〜3人の稲刈受託者を育成・登録することにしました。この受託者をまとめて飯岡農協農作業受託組合を組織し、翌年、国のモデル事業で都南西部農業機械銀行を組織、あらゆる農作業の受託体制を整えました。
 2つめは平成4年、受託者(担い手)の経営改善と農地集積のため農協が農地保有合理化事業の窓口となり、農地の出し手と受け手が安心して農地管理できるようになったのです。農政の大転換が図られようとしていた平成18年秋、このような取り組みを背景に集落営農組織「都南地域営農組合」を設立、そして平成25年3月に法人化、経営面積960ha、組合員数891名(都南地域の米農家95%が加入)の大規模農事組合法人となりました。
 今後は[1]6次産業化の強化(盛岡の製麺会社と連携した米粉めん)[2]農地の受け手農家(担い手)の育成[3]農地の出し手農家の生きがいづくり(水管理、草刈、直売所への出荷など)[4]女性活動や学童農園を計画しています。

◆集落ぐるみ農業へ

米粉めん 田植え体験イベント 農業と農村が成立するために「結いの心」は不可欠です。日本の農業は家族的農業の集合体です。集落の老若男女のすべての人が集落の一員として生きがいを持ち、1人ひとりが活躍する場を作ることが大切です。
 高齢化が進むなか、出し手農家が9割を占める状況が予想されます。この農家こそが農村の活力を生み出すよう、生きがい作り(生活環境事業)の取り組みが重要なのです。「結いの心」での集落ぐるみ農業は、農村に活力を与え、集落の農家が安心して営農、生活ができる環境をもたらすものと確信しています。

(写真)
米粉めん 田植え体験イベント


(関連記事)

【第35回農協人文化賞】表彰式 農協運動リードする15氏を表彰(2013.06.21)

【第35回農協人文化賞】シンポジウム (2013.06.21) 

【第35回農協人文化賞】記念パーティ なごやかに記念パーティ(2013.06.21)

(2013.07.12)