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【JA愛知東代表理事組合長(愛知県)】
河合 勝正 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第35回農協人文化賞」信用事業部門受賞。
 受賞者のこれまでのあゆみを紹介する。

小さな協同 積み重ねて

◆みなわが師、の心で

 今日まで45年、ひたすらJA一筋の人生において組合員の皆様方に様々な部分でお世話になってまいりました。
 そのJA人生の半分以上は参事職と常勤役員を通じ、経営層の分野でお勤めをさせていただいています。若き頃は、ひたすら営農指導員として、がむしゃらに農家の営農と生活の現場や農業者の懐に飛び込んで、酒を酌み交わしながら朝まで夢を語り合ったことが懐かしく思われます。
 そんなある日、突然組合長から参事職を命ぜられました。課長も部長もいるのに、なぜ一番若い係長の私が、どうしたらよいのか本当に戸惑いました。躊躇している私に、組合長からいただいた言葉が「我以外、皆、我が師なり」でありました。謙虚さと素直さをもって、みんなから教わればいい、困ったら組合員に聞けと諭されました。

◆農村をどう守る?

JA愛知東本店 ただ、こうした経営者の立場にありながら、今なお農業、農村の疲弊した姿があることに、大きな責任といらだちを感じてます。
 なぜ、農村は過疎地域に向かうのか、国や地方行政だけに責任をぶつけるのは、管内の大半の皆さんを組合員にもつ組織の責任者としては、あまりにも情けなく卑怯であると感じています。しかし、焦る気持ちとは裏腹に、管内に住まう若者の現状と言えば、一握りの農林業経営者と建設土木業や商店街の経営者、多くは役所やJAの職員が相当数を占めているのが実情であります。結婚できない、しない若者も相当数います。こうした数少ない若者も、結婚すると農村を離れて行くケースが目立ちます。なぜと聞くと、学校が近くに無い、子どもが少なくて友達もできない、病院に小児科、産婦人科が無く大変不安であると言っています。
 子どもが成長するまで都会で暮らしたいと言って都会に移り住む若者達が、再び故郷に戻ってくるまで、元気な高齢者と女性の力で、地域や農村を守って行く必要があることを痛感しています。私どものような高齢化の著しい地域にとって、支えていただく住民の皆さんの健康寿命を伸ばす活動支援や対策なども、守るための大事な重点課題の1つであります。

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JA愛知東本店

◆組合員の多様な活動

子ども農学校を開設 その支援策の1つとして、元気な高齢者や、生活感の滲み出ている女性のみなさんの居場所作りや活躍の場作りに向けて共に考え、どうやって作り上げ、形にして行けるのか色々悩みましたが、手初めとして、皆さんの願いを叶えさせる最良の手段は、その目的にあった組織を作ることだと信じ、様々な形で呼びかけを始めました。
 その組織作りにあたっては、小さく生んで大きく育てる組織、集める組織より集まる組織、大きな協同を目指すより小さい協同あるいは部分協同から、そんな思いで様々な組織活動の育成支援に携わって参りました。農業生産部組織も大きくはありませんが、40を超える組織が育ちました。高齢者を中心とする年金友の会も、管内の年金受給資格者の70%を超える組織率を誇っています。女性部も青年部も皆さんが主体性をもって、自主的に自立した組織活動を心掛けて活動いただいています。
 子どもの数は決して多くはありませんが、こども農学校の開校や学校への農産加工や農園指導の出前講座も、積極的に取り組まさせていただいています。こうした組織活動や教育文化活動も健全経営があればこそ、より充実したものになると日頃から思っています。

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子ども農学校を開設

◆普段の生活を幸せに

 コープあいちとの調印式 実は、合併当初は悲惨な経営状態で、事業管理比率が95%を超え、いつ経営破綻してもおかしくない状況下にありました。そのため、当時はひたすら経営の立て直しに没頭していたことを思い出します。この厳しい状況を乗り越えるためには、自らの力で自立して行く以外、道はないとの思いから、経営総点検や経営刷新計画も自分たちの手作りで進め、先ずは全ての役職員の意識統一から始めて、組合員の皆さんに理解を求めました。
 JA管内の面積は県土の20%もある一方、高齢化率の高さ、人口密度の低さも圧倒的一番の地域となっていました。管内には7つの市町村がありましたが、88%が山林で、市町村をつなぐ2車線道路は一本もない、極めて道路事情の悪いことも改革を推し進めるには大きなネックであったように思います。
 苦難の道程ではありましたが、組合員や地域住民の勇気ある決断と、自立に向かっての熱い思いが実を結び、今年で合併20周年。私たちの地域には、地味ではあるけれども、人間らしい営みをしているすばらしい人々と、誇るべき自然と歴史文化があります。焦らずに、とりあえずは、今ここに住んでいる人々が、元気で普段の生活が幸せに思える、そんな農村地域作りに貢献していればと思っています。

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コープあいちとの調印式

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