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【JA仙台代表理事組合長(宮城県)】
高野 秀策 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第35回農協人文化賞」震災復興特別賞受賞。
 受賞者のこれまでのあゆみを紹介する。

協同の力を支えに復興へ

見舞金と支援物資を直接届けたJA東京むさし役職員の皆さん 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、JA仙台管内は多数の尊い人命が失われ、かつ、甚大な経済被害を受けました。震災直後から現在に至るまで、全国のJAグループの支援物資や義援金を始め、人的支援、ボランティア活動などさまざまなご支援をいただき、深く感謝申し上げます。
 さらには、JA間連携として災害発生時協力、相互扶助等に基づき、JA東京むさし、JAおちいまばり、JAとぴあ浜松の3JAと友好・姉妹JA協定を締結しました。
 そして、JAおちいまばりからはJAグループ内で初の支援職員の派遣を受けています。
 農地は約2000haの水田が津波の被害を受けましたが、残り約400ha余りの復旧工事を残すまでとなりました。
 復旧された農地は3年ぶりに無事田植作業を終え、新緑がまぶしい光景は感慨深いものがあり、さらなる復興に向けた原動力となっています。

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見舞金と支援物資を直接届けたJA東京むさし役職員の皆さん

◆復旧・復興に一丸となって

JA仙台本店 震災当日、JA仙台では対策本部を設置し、すぐに職員や組合員の安否確認、施設等の被災状況の確認を行いました。その中で、被災した組合員から沿岸部にある支店を避難所として開放して欲しいと要望されました。近くに学校等の避難所があったにも関わらず、組合員は「おれたちの農協・支店だ」という気持ちで集まってきたのです。ただちに支店会議室を避難所として開放することとしました。 また、直売所や資材館等から食料や日用品をとにかく集めるだけ集め、避難所への物資の支給と炊き出しを行いました。
 その後、行政や関係機関と震災への迅速な対応や農業関連情報の共有化を目的として、震災から1か月が経過した平成23年4月5日に仙台市・JA仙台・仙台東土地改良区の3者が連携して仙台東部地域農業災害復興連絡会を設置しました。復興連絡会では、被災した農家に復旧情報を周知する広報対策、農地の塩害対策、農地復旧、農家意向調査、復興計画策定の5つのチームを編成しました。

(写真)
JA仙台本店

◆営農継続の意志に励まされ

 その中の農家意向調査では、約8割が営農の継続を希望していることが分かりました。この数字は心が折れかけていた我々に大きな励みとなり、1日も早い営農再開に向けた取り組みを心に決めたのでした。
 現在、仙台東部地域では、農地の復旧に併せ、農業生産性の向上及び農業経営の安定を目指し、国の直轄による大規模ほ場整備事業が進められています。通常のほ場整備と違い、早期の営農再開を図るために、短期間で進める必要があり、合意形成や換地等が大きな課題となっています。
 特に合意形成に当たってJAの果たす役割は大きく、実行組合の役員やJA職員の昼夜を問わぬ働きにより、地権者の合意率は約90%となっており、今年の8月から約2500haの大規模ほ場整備事業がスタートする予定です。 管内消費者への「食の発信基地」としてファーマーズマーケットを東日本大震災からの「復興のシンボル」と位置づけ、平成23年10月に本格的な農産物直売所「たなばたけ」をグランドオープン、復旧が進むにつれ、出荷者、出荷量とも増加しています。また、旧店舗は「ベジキッチン」と名付け、料理教室に改装し消費者向けの食育情報の発信拠点として機能しています。

◆JA出資型法人設立へ

 大規模ほ場整備事業は、被災農家の期待を背景に、単なる復旧ではなく集落営農組織や法人による米・麦・大豆作の経営効率化や、6次産業化で付加価値による所得の拡大が期待されています。
 しかし、津波で被災した多くの組合員は、農業機械や施設を失っています。そこでJA仙台では行政と連携し、10集落営農組織に対して、国の復興交付金によるリース事業を活用して、主要農業機械やパイプハウス等の施設を整備したほか、JAグループ独自の生産資機材提供の支援も実施しました。これにより、営農意欲を失いかけていた被災農家の大きな心の支えになったのは大変嬉しいことです。
 一方、深刻なのは担い手不足です。これまで進めてきた集落営農の育成とともに、JA出資型法人の設立準備を急いでいます。これは地域農業の核となる担い手を明確化し、継続性のある経営体を目指して支援するものです。今後は、中山間地でも設立する予定です。

◆被災した組合員の「日常」取り戻す

 平成23年5月に震災復興担当専任部署として震災復興推進課を設置しました。その後、24年4月からは、「復興元年」と位置づけ、全支店・営農センターに「震災復興相談窓口」を設け相談対応をしました。
 また、被災の大きい5支店では、「農とくらしの相談会」を24年5月から毎月1回開催し、被災した組合員に営農・生活の「日常」を取り戻すことがわれわれに与えられた使命であると肝に銘じ、迅速な対応をしました。今後も組合員・地域との絆を大切にし、震災復興に向け精進してまいりたいと思います。


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