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【JA斐川町代表理事組合長】
周藤 昌夫 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第36回農協人文化賞」の経済事業部門を受賞した。

「1町1農場」の実現へ

 

◆加工事業と観光を連携

 昭和36年県立出雲農林高校卒業と同時に島根県中央事業農業協同組合連合会に入会して以来、50数年にわたり農協運動に取り組ませていただいています。県域連合会事業を通じて、多くの体験・教訓を得たことが、後の農協運動・運営の肥やしになっています。
 入会当初から購買部農機具担当として各地の農業構造改善事業での大型機械の導入促進に行政の方と努力しました。当時歩く農業から乗る農業への移行期であり、共同利用での不安が先行し、導入は難航する事が多かったですが、導入されたところは必ずといってよいほど、リーダーが存在し、行政・JAに対し強い要望が出されていました。
 こうした中で、強く感じたことは、ソロバン勘定より人間勘定(感情)とのことでした。農業機械担当後半は、全国連の担当部署と連携し、農業機械専任職員協議会の設立、部品受発注システムのコンピューター化、大型農機の県連整備施設の建設等、信頼される系統農機事業の構築に努めました。
春の農繁期のJA斐川町管内の様子 島根経済連では、出雲地方で生産されるデラウエア種を島根ぶどうとして共同販売していましたが、何分にもビニールハウスによる加温促成栽培のため、生食不向果(裂果等)の付加価値向上が課題であり、ワイン醸造を行っていましたが、その採算性は厳しく、観光ワイナリー転換方針が示され、平成の初めから現場の責任者として担当することになりました。
 全くの素人でしたが、観光ワイナリーとして島根県産ワインをメインとする売店・島根ワインと島根和牛肉をメインとするバーベキューハウスを基本とする事業展開で、その具体化を職員と連日議論し、目標に向かって「P.D.C」の繰り返しでした。国内旅行の上昇、2km先に観光面では全国区の出雲大社があって立地条件に恵まれていたこともあり、年々来場者も増え、年間100万人を超える来場客を迎える出雲路観光の拠点として成長しました。このことは、役職員が目標を共有し、担当部・課で実行されたことに大きな意義を感じています。

(写真)
春の農繁期のJA斐川町管内の様子


◆役職員が同じ目標を持って

 島根経済連が全農との統合と同時に設立された(株)島根ワイナリーに転籍し、日本一の観光ワイナリーを目指し職員共に努力を重ね、異業種の方々との交流も深まり、絆および相互連携の重要性を強く感じましたので、その後の会議・職員教育等で広く活用しています。
 入会から数年後、研修会かセミナーで聞いた記憶があるのですが、自分なりに整理し、「水の心を大切に」を30数年来自分のモットーとしています。取りようはいろいろありますが、喉がカラカラに渇いた二人の間に満水の盆があり、どちらかがどうぞと盆を押出すと水は押出した方に、自分が先だと盆を引っ張ると水は相手の方に行きます。何をなすにも常に相手の立場に立って考え行動することです。また満水の洗面器の中心に割り箸を立ててグルグル回すと水は自然に動き出し、やがて大きく渦を巻いて一方向に回りだします。これは協同運動にも通じます。目標に向かって粘り強く共有化に努め、実践することだと心掛けています。

◆営農事業軸に組合員結集を

 斐川町農協の理事として参画する中、役員改選期に当り代表理事組合長に推挙され、就任しました。当JA管内は出雲平野の東部にあり、平坦な水田地帯として発展し、圃場整備も完成しています。農業振興方針も「1町1農場構想」を樹立し、行政と一体となった土地利用型農業確立を進めています。県内外に誇れるこの地域をいかに次世代に継ぐかを使命と認識し、そのため、次の点を重点に取り組んでいます。
 [1]グローバル化の進展、地球温暖化の進行、食の安全・安心、少子高齢化、組合員の世代交代等JAを取巻く環境が大きく変化する中、一層信頼されるJAを目指し、営農を基軸とする事業展開による総合農協としてのJA斐川町の構築、[2]組合員ニーズに応え、利用される施設投資(生産・営農・福祉・介護・葬祭・支所機能)により、組合員のJA事業への結集、[3]JAの財務基盤の確保と健全経営です。
 土地利用型農業の高度化に向け、補助事業を取り入れ、3か年計画で管内農業生産額を3億7000万円アップする運動を展開しました。JAも約8億円をかけて麦・大豆・ハトムギ・乾燥調製・貯蔵施設を建設し、ハード面から積極的に取り組みました。異常気象の連続でしたが、5年目の平成24年目標を達成しました。
 このことは異常気象下で生産者の対応努力と関係機関の指導の賜物であり、関係者一丸となった成果であり、高く評価されます。25年度からは新たな5か年計画「斐川地域農業ビジョン―次代へつなぐ斐川元気農業―」として取り組み、斐川農業の継続発展と共に地域振興に努めます。

【略歴】
すとう・まさお
昭和17年生まれ。
36年3月島根県立出雲農林高校卒業。島根県中央事業連入会。同年島根経済連と合併。63年3月農業機械課長。平成元年9月農業機械部長、平成3年5月農機施設部長。平成3年10月島根県経済連島根ワイナリー場長8年5月斐川町農協理事就任、20年6月斐川町農業協同組合代表理事組合長就任。

【推薦の言葉】
 周藤氏は、島根ワイナリーの社長として健全、かつ堅実な運営発展に尽くした功績は大きい。その当時から地元の斐川町農協の理事としても活躍。12年間の実績を踏まえ、平成20年に斐川町農協の組合長に就任。農協人として斐川農業の振興(産地生産拡大プロジェクト支援事業目標達成等)を中心に農協の組織基盤と財務基盤の確立や農業団体および地域のリーダーとして、多くの要職を務めながら、その能力をいかんなく発揮した。
 同氏は地域と農業に対する思いは人一倍強く、平成23年に斐川町は出雲市と合併したが、町の時代からの行政との連携のよさには定評があり、JAや行政に対する農家の信頼が高い。JA・行政、担い手、集落営農組織、土地改良区とともに、「1町1農場」を基軸とした斐川町地域農業ビジョンに基づき、農地集積、担い手育成、適地適作の推進はもとより、農地のフル活用を進め、土地利用型品目と園芸品目のバランスのとれた産地形成を目指した取り組みを実践している。

(2014.06.24)