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温室効果ガス排出をどう削減できるのか

北大の波多野さんが5つの問題を指摘 −農環研

シンポジウムの会場から (5月14日・新宿明治安田生命ホールで) (独)農業環境技術研究所(以下「農環研」)主催による「第30回農業環境シンンポジウム」が5月14日、東京都新宿区の新宿明治安田生命ホールで開催された。 今回のテーマは『温室効果ガス排出をどう削減できるのか〜農林水産分野における地球温暖化防止対策〜』で、北大大学院農学研究院の波多野隆介さんが『温暖化緩和に対して農林業へ期待するもの』と題して基調講演を行い、5つの解決すべき問題点を指摘した。 昨年、気候変動に関する政府間パネル(IPPC)の第4次報告書が公表され、地球温暖化が確実に起こっていること、また、その原因は人間活動による温...

シンポジウムの会場から(5月14日・新宿明治安田生命ホールで)
シンポジウムの会場から
(5月14日・新宿明治安田生命ホールで)

(独)農業環境技術研究所(以下「農環研」)主催による「第30回農業環境シンンポジウム」が5月14日、東京都新宿区の新宿明治安田生命ホールで開催された。
今回のテーマは『温室効果ガス排出をどう削減できるのか〜農林水産分野における地球温暖化防止対策〜』で、北大大学院農学研究院の波多野隆介さんが『温暖化緩和に対して農林業へ期待するもの』と題して基調講演を行い、5つの解決すべき問題点を指摘した。 昨年、気候変動に関する政府間パネル(IPPC)の第4次報告書が公表され、地球温暖化が確実に起こっていること、また、その原因は人間活動による温室効果ガスの増加であることが報告された。
これに対して、温室効果ガス排出の削減を目指す「京都議定書」が、議決から10年の歳月を経て、本年から2012年までの第1約束期間をスタートさせている。 わが国はこの期間の排出量を、基準年である1990年の排出量から6%削減することになっているが、わが国の温室効果ガスインベントリによると、2006年の時点で、逆に6.4%増加している。
この中で、森林や農耕地土壌は炭素の吸収源として期待されると同時に、そこからの温室効果ガスの排出抑制が求められている。
農環研では、1980年代から農耕地土壌の炭素蓄積量の変動解析や農耕地から発生する温室効果ガスの削減技術対策に取組んでいるほか、課題に対するプロジェクト研究も推進している。 基調講演で、波多野さんは、農林業が解決するべき問題として森林生態系の維持、農地土壌の有機物の回復、過剰な窒素施与によるN2O放出の抑制、過剰な家畜糞尿の処理、水田からのCH4放出の抑制の5つを指摘。
同氏は「今後、世界の人口増加にともなって食料は足りなくなる上に、エネルギー作物の生産にも振替られることになろう。必然的にわが国も独自に食料生産量を向上させなければならない。その時に、農林業に関わる温暖化の影響を現状より低下させることが求められる。わが国の農業試験研究は養分動態に関する多くの蓄積をもっており、その応用により食料生産の向上と温暖化抑制のための新しい農業技術の開発が期待される」と結んだ。

(2008.05.19)