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未曾有の飼料価格高騰で生産現場の不安増大与党、 期中価格改定も視野に対策検討

−JAグループが畜産酪農対策危機突破全国代表者集会

配合飼料価格の高騰が畜産・酪農を直撃し、地域によっては廃業する経営も出るなか、追加的な緊急対策の実現によって危機を突破するためJA全中は5月28日、東京の憲政記念館で全国代表者集会を開催した。全国から700名が参加、JAグループの総意を結集してこの未曾有の危機を乗り切る運動を展開することを確認した。 集会でJA全中の宮田会長は、2月決定された緊急対策のもとで生産性向上と安心・安全な国産農畜産物の供給に懸命に努力しているが、飼料価格は当初の予想をはるかに超えた水準で上昇、「われわれの努力だけではどうにもならない状況。穀物価格の動向を見通せないなか、今後とも経営を維持できるか、生産者はきわめて不...

配合飼料価格の高騰が畜産・酪農を直撃し、地域によっては廃業する経営も出るなか、追加的な緊急対策の実現によって危機を突破するためJA全中は5月28日、東京の憲政記念館で全国代表者集会を開催した。全国から700名が参加、JAグループの総意を結集してこの未曾有の危機を乗り切る運動を展開することを確認した。
集会でJA全中の宮田会長は、2月決定された緊急対策のもとで生産性向上と安心・安全な国産農畜産物の供給に懸命に努力しているが、飼料価格は当初の予想をはるかに超えた水準で上昇、「われわれの努力だけではどうにもならない状況。穀物価格の動向を見通せないなか、今後とも経営を維持できるか、生産者はきわめて不安な環境にある」と訴え、「わずか数か月の間に生産者の経営はますます疲弊している」ことを強調した。
そのうえで、JAグループは今後も生産性向上に向けた農家支援の徹底や飼料原料の安定的な確保、適正な価格転嫁が図られるよう消費者への理解醸成対策などを積極的に進めていくとしながら、配合飼料価格安定制度の維持のための財源確保など「未曾有の危機のなか畜産・酪農の将来展望が拓かれる政策の確立に向けてJAグループの総力をあげる」と語った。
今回の追加対策では、配合飼料価格安定制度維持のための財源確保が最大の課題となっている。
配合飼料価格は、1年6か月間でトンあたり4万2600円から6万2800円へと約5割、2万円も上昇した。ただし、生産者の実質負担増は1万円にとどまっており、これは配合飼料価格安定制度による補てんが行われたためだ。補てん金の総額は1600億円になっているが基金は昨年10−12月期の支払いで枯渇、金融機関からの借り入れを900億円を限度として決定した。しかし、7月以降もトンあたり2000円以上の値上げが避けられないことから、十分な補てんを行うには財源が不足し、同制度を維持するための対策確立が急務となっている。
そのほかJAグループでは2月に決まった畜種ごとの政策価格の期中改定と、生産コスト上昇分の適正な価格転嫁の促進、飼料用米など自給飼料基盤の抜本的な強化を求めている。

◆「畜産・酪農再生プラン」も検討

集会に出席者した谷津義男・自民党総合農政調査会会長代行は「将来の希望が持てる畜産・酪農にしていくためにはどうあるべきか、党としては期中改定も視野に入れて、新たな財政出動も議論をしている。希望の持てる体勢をしっかり作りあげていかなければ日本国民の危機状態を生み出していくと考えている」とあいさつした。
井上義久・公明党副代表は危機の根幹には飼料を含めた自給率の低下があり「今こそ国をあげて食料自給率向上に取り組むべき。とくに水田の活用を真剣に考え飼料用米を国家戦略として施策を展開する。そのための技術の開発、生産者手取りの安定的、継続的な確保ための新しい枠組みもこれから必要になってくるのではないか」と抜本的な政策検討の必要性を強調した。
また、自民党畜酪小委の葉梨康弘委員長は想定外の飼料価格高騰で「果たして将来にわたって飼料を外国から確保できるのかどうか。そこまで状況が進んでしまった」として、緊急の追加対策のほかに、飼料用米の導入などの具体策を盛り込んだ「将来に向けての畜産・酪農の再生プラン」を打ち出す考えを示した。
集会ではその後、3人が決意表明。JAグループの総意を結集して危機を突破することを訴えた。追加対策は当初、5月末をめどに決定する予定だったが、6月の上旬にずれ込む。

◆「畜産・畜産は未曾有の危機」−全青協会長など3人が決意表明

高橋正道 士幌町農協専務理事
高橋正道
士幌町農協専務理事

決意表明を述べたのは北海道のJA士幌町の高橋正道専務理事、熊本のJA菊池青壮年部の山瀬欣也氏、JA全青協の竹村英久会長の3人。
高橋専務は「士幌町は昭和40年代からホルスタイン種牡牛の飼育を始め、今では士幌牛のブランドで年間1万8000頭を出荷。新規就農者には他業種に就いていたが、いい環境で子育てをしたいからと子どもや奥さんを連れて帰って来た人がいる。国内の農畜産物への期待も高まっている」と明るい話題を出しつつも、「今の飼料価格の高騰は未曾有の危機。生産コストの6割を占める飼料価格は1年間で7950円も上昇し、既に現場での技術向上やコスト減少の自助努力だけではもうどうにもならない。投機マネーによる価格高騰の煽りを、何故生産者や消費者が請負わなければいけないのか。農業の崩壊は地域経済の破綻でもある。どうか酪農畜産農家の経営改善にむけた政策を取りまとめて欲しい」と、厳しい現状認識と追加支援を訴えた。

山瀬欣也 JA菊池青壮年部
山瀬欣也
JA菊池青壮年部

山瀬氏は「就農して10年。これまでBSEや口蹄疫など畜産が危険に晒されたことがあったが、現在の飼料価格高騰は予想外。将来2人の子どもと一緒に畜産をやっていきたいけど、今のままではとても継がせられない。私は死に物狂いで頑張るので、皆さんもともに頑張りましょう」と、力強く宣言。

竹村英久 JA全青協会長
竹村英久
JA全青協会長

JA全青協の竹村会長も「本当なら今の時期は寝る間も惜しんで農作業をしたいのだが、追加支援がなければ経営は立ち行かない。期中改定で現行対策への上積みをした上で来年度に向けた抜本的な追加対策をして頂きたい。特に飲用乳には肉用牛のマルキンのような経営安定対策をお願いしたい。わが国から絶対に畜産・酪農をなくさない、という断固とした姿勢で追加対策獲得に臨んでいただきたい」と、列席した国会議員へメッセージを伝えた。

(2008.06.02)