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山田俊男参議院議員、鈴木宣弘東大教授が講演

−全国農政連が夏季セミナー開く (8/20)

 全国農業者農政運動組織連盟(=全国農政連)は8月20日、虎ノ門パストラルで都道府県議会議員・農政連リーダー夏季セミナーを開き、「わが国の自給率向上にどう取り組むか〜世界的な食料問題と日本農政の課題」をテーマに、山田俊男参議院議員、鈴木宣弘東大教授が講演した。 ◆生産調整実施者へのメリット、直接支払いで  山田氏は「食料争奪時代の農政課題」として講演した。要旨は次の通り。  昨年の米価対策は、34万tの政府買い入れ余地があって下げ止まったが、買い入れ前に安値で販売されたものも多く、対策が徹底できなかった。下げ止まりのメリットは生産調整非参加者も受けた。生...

 全国農業者農政運動組織連盟(=全国農政連)は8月20日、虎ノ門パストラルで都道府県議会議員・農政連リーダー夏季セミナーを開き、「わが国の自給率向上にどう取り組むか〜世界的な食料問題と日本農政の課題」をテーマに、山田俊男参議院議員、鈴木宣弘東大教授が講演した。

◆生産調整実施者へのメリット、直接支払いで

 山田氏は「食料争奪時代の農政課題」として講演した。要旨は次の通り。
 昨年の米価対策は、34万tの政府買い入れ余地があって下げ止まったが、買い入れ前に安値で販売されたものも多く、対策が徹底できなかった。下げ止まりのメリットは生産調整非参加者も受けた。生産調整実施者へのメリット対策をどう具体化するかが課題だ。20年産米の価格が浮上しない場合、過剰と価格低落に耐えられるかが問題。生産調整実施者へメリットを与えるためには、直接支払いをどう仕組むかが重要ではないか。
 燃料・資材の高騰対策としては、畜産物価格対策の事例がある。畜産は価格補てんの仕組みがあるから今年のように2度にわたる対策を打てた。制度・仕組みが大切だ。
 食と農を国政の基本に位置づけるべき。市場原理では律しきれないわが国の農業・農村の実態を踏まえ、地域に合った日本型の農業・地域発展をめざすべきだ。また、これを支えるための直接支払いなどの構築が必要ではないか。
 農業の維持発展には国民合意の形成が必要だ。わが国では耕作放棄地があってはだめで、どれだけ作るかを合意し、徹底的に直接支払いをしていくべきだ。
 山田氏は、そのなかで果たす「農業団体の役割は大きい」と結んだ。

◆国産選択へ生産者と消費者の”絆”重要

 鈴木氏は「食料自給率の向上と日本農業の今後の方向」として講演した。要旨は次の通り。
 米価の急速下落、飼料穀物価格高騰・燃料高騰にもかかわらず、上がらない乳価・畜産物・青果物価格、麦・大豆作等の減収、といくつもの悲鳴が農業現場を覆い、国産食料が重要との認識が高まっているのに、農業・農村は疲弊している。自給率の低さは、支援水準の低さの証で、関税が高ければこんなに輸入は増えないし、関税が低くても、農家所得を形成する国内の補助金が多ければこんなに輸入が増えるはずがない。
 日本の生産者がめざすべきなのは、環境にも動物にも人にもやさしい地域資源環境型の農業に徹して、消費者に自然・安全・本物の農産物を届けるという、食にかかわる人間の基本的な使命に立ち返ることだ。そのことが、国際化による安い価格との競争の時代になっても、国産農産物を差別化して生き残れる道を提供し、アジアに販路を見出すことにもつながる。
 さらなる自給率の低下が懸念されるなか、これ以上の食料貿易自由化の徹底が本当に日本のあるべき姿なのかについて十分な議論が不可欠であり、どんな状況においても消費者が国産を選択するような生産者と消費者の絆ができるかどうかが重要だ。
 日本の農業政策にはさまざまな政策メニューがあるが、それらを集約してより直接的に農家の所得形成につながるような政策に集中的に予算配分することも検討されてよかろう。
 鈴木教授は「危機はチャンスでもある。われわれ研究者の立場からもいっしょに頑張るので、皆さんの尽力で盛り立てて欲しい」と締めくくった。

(2008.08.25)