農政・農協ニュース

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農の力で自然環境を守り商品価値を高める

−環境保全型農業推進シンポジウム (10/22)

    地球温暖化対策として農地の炭素貯蓄力に注目が集まるなど、環境問題の視点で農業を考えようという動きが出てきている。農の力で自然環境保護や景観形成を行い、持続性の高い農業生産を推進しようと、全国環境保全型農業推進会議は10月22日、平成20年度環境保全型農業推進シンポジウムを開いた。    ◆「自然と共存−共生する農業を目指す」 あん・まくどなるど氏、本名Anne McDonald。カナダ出身で日本を中心に農山漁村の取材活動などをしている。 伸萠ふゆみずたんぼ生産組合 三浦孝一氏 タケチャンファーム...

    地球温暖化対策として農地の炭素貯蓄力に注目が集まるなど、環境問題の視点で農業を考えようという動きが出てきている。農の力で自然環境保護や景観形成を行い、持続性の高い農業生産を推進しようと、全国環境保全型農業推進会議は10月22日、平成20年度環境保全型農業推進シンポジウムを開いた。
    
◆「自然と共存−共生する農業を目指す」

あん・まくどなるど氏、本名Anne McDonald。カナダ出身で日本を中心に農山漁村の取材活動などをしている。
あん・まくどなるど氏、本名Anne McDonald。カナダ出身で日本を中心に農山漁村の取材活動などをしている。
伸萠ふゆみずたんぼ生産組合 三浦孝一氏
伸萠ふゆみずたんぼ生産組合 三浦孝一氏
タケチャンファーム 野木武氏
タケチャンファーム
    野木武氏

    「地球温暖化の影響と農業に求められる役割」をテーマに基調講演をしたのは、国際連合大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニットのあん・まくどなるど氏。
    環境保全型農業の推進に取り組み始めたきっかけを、「平成元年に長野県信濃町でフィールドワークをしたが、春の田植え前の時期、あぜ道に大量の農薬や肥料の袋があった。農家の人に、これだけの農薬が必要なのですか、と聞いたら、分からないけど農協の人がやれっていうからやってる、と答えが返ってきてショックだった。農協と農家の信頼関係は素晴らしいと思うが、果たして農家が適切な農薬の量を知らなくてもよいのか、と疑問に感じた」と話す。
    三重や沖縄など日本各地を歴訪して環境保全型農業の取り組みを見てきた経験を語りながら、「環境保全型農業がいかにして、砂漠化や気候変動など、農業生産を低下させる要素に立ち向かえるかを考えなくてはいけないし、CO2以外の温暖化ガスへの対策も必要だ」と今後の展望を述べ、「日本の農業は世界的に見ても発達している。現在17万人のエコファーマーがもっともっと増えてほしい」と期待を込めた。
    事例報告は宮崎県大崎市の伸萠ふゆみずたんぼ生産組合と、京都府京丹後市のタケチャンファーム。
    宮崎県大崎市の蕪栗沼と周辺水田は、冬でも田んぼに水を張る「ふゆみずたんぼ」の取り組みをすすめ、世界で初めて水田でラムサール条約に加入した。三浦孝一氏は「ピーク時にはマガンなど10万羽以上の渡り鳥がやってくる。渡り鳥と共生を図りながら美味しいお米を作りたくて、ふゆみずたんぼを始めた」と話す。地元の小学生や酒造メーカーなどとも協力し、地域全体で「農業と自然の共存、共生」を目指している。

ふゆみずたんぼ生産組合は地域との交流も活発に行う
伸萠ふゆみずたんぼ生産組合は
    地域との交流も活発に行う

    タケチャンファームの野木武氏は、「地元特産の松葉カニの殻などの有機資源に着目して、3年に特別栽培米を始めた。環境負荷の少ない地域循環型農業をすすめると、作物にも物語性がつき、販売戦略にもつながる」と、環境保全型農業のメリットについて話した。「トラクターの燃料にはてんぷら油を使い、電力は風力発電を利用している。自然や環境にやさしい農業をすることで、次代を担う子どもたちに少しでも農業や環境のことを知ってもらいたい」と希望を語った。

◆エコファーマーは毎年2〜4万人増加

全国環境保全型農業推進会議 松本聰会長
全国環境保全型農業推進会議 松本聰会長

    同会議の松本聰会長があいさつで「環境保全型農業は順調に伸びてきている。エコファーマー認定者は平成20年6月の時点で約17万人になった。毎年2〜4万人のペースで増えている。専門家だけでなく一般消費者にも興味をもたれるようになった」と述べたように、4年に環境負荷の軽減に配慮した環境保全型農業を全国的に推進、11年にたい肥などの土づくりと化学肥料・化学合成農薬の低減に取り組む農業者をエコファーマーとして支援する法律、18年に有機農業の推進に関する法律の制定などで、確実に普及している。
    政府は23年までに、全都道府県が有機農業の推進計画を定めることを目標とし、技術支援や有機農業作物の販路確保などに取り組む有機農業モデルタウンを育成している。
    一方、環境保全型農業の問題点として「労力がかかる」「資材コストがかかる」など経営・労働面での負担が大きいことがあげられている。今後も環境保全型農業の取り組みを拡大するためには、技術の体系化を進めて収量と品質の低下を防ぎ、生産コストや労働時間を軽減するなどの対策が必要だ。

増加するエコファーマー数

(2008.10.24)