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とりまとめに向け論点整理

―食品ロスの削減に向けた検討会
(11/21)

    食品ロスの削減に向けた検討会(座長・牛久保明邦東京農業大学教授)は11月21日、5回目の検討会を開き、これまでの意見や資料をベースに、とりまとめに向けた論点整理を行った。    わが国の食品ロスの現状については、これまで数字的裏付けがなかったが、食品ロス検討会では食用に向けられる年間約9000万tの食用資源のうち、食用関連事業者と一般家庭合わせて約1900万(平成17年度)の食品廃棄物が排出され、このうち本来食べられるにもかかわらず廃棄される、いわゆる食品ロスが年間約500〜900tと推計されることを初めて...

    食品ロスの削減に向けた検討会(座長・牛久保明邦東京農業大学教授)は11月21日、5回目の検討会を開き、これまでの意見や資料をベースに、とりまとめに向けた論点整理を行った。
    わが国の食品ロスの現状については、これまで数字的裏付けがなかったが、食品ロス検討会では食用に向けられる年間約9000万tの食用資源のうち、食用関連事業者と一般家庭合わせて約1900万(平成17年度)の食品廃棄物が排出され、このうち本来食べられるにもかかわらず廃棄される、いわゆる食品ロスが年間約500〜900tと推計されることを初めて明らかにした。
    食品ロスの削減は、この可食部分のロスをどのようにして減らすかを大きな目標に掲げることを明確にした。
    論点整理では、まず食品ロスの発生につながる要因を食品にかかわる主体別に分析した。食品製造業、食品流通業関連での要因は流通段階では商品管理のため、安全性や品質に問題なく食べられる期間よりかなり短く販売期間が設定される欠品防止のための多めの生産・仕入れなど、余剰・過剰となることを前提とした商慣行になっている値引き・見切り販売をせずに返品・廃棄しているフードバンクなど二次市場の利用が不十分、とした。
    外食産業関連での要因は消費者が飲食店で自分にあった量や好みを選択することが困難日々の需要予測の当たりはずれがロスに直結食べ残しの持ち帰りが困難、などを指摘した。持ち帰りは、アメリカでは常態化しているが、日本ではその場で食べることを前提に調理されているほか、高温多湿型の日本の気候では食べ物が傷みやすく、食品の安全性に影響をおよぼすためだ。
    消費者に関連する要因は「もったいない」と感じる食の大切さに対する意識の薄れ賞味期限(おいしく食べることができる期限)の正しい意味の理解が不十分で、まだ十分にたべられるにもかかわらず、賞味期限が切れた食品を廃棄する傾向がある食品の在庫管理が不適切で、冷蔵庫に死蔵したり、調理方法の工夫が不十分のため、過剰除去や作りすぎで結果的に廃棄されることを指摘した。

◆「残さず食べる」意識改革必要

    発生の要因をふまえ、どうしたら食品ロスを減らせるかについての具体的提案としては、まず食品関連事業者、消費者共通の取り組みとして「残さず食べる」「食に感謝の心を持つ」など、食に関する意識改革が必要とした。
    食品製造業、食品流通業による取り組みとしては商品ごとの特性に応じた科学的、合理的根拠にもとづいた適切な販売期間を確保する製造業者と流通業者の取引は買い取りを原則とし、返品による廃棄を減らす賞味期限切れや規格外品でも食品衛生上問題がない食品はディスカウントなど特別ルートでの廉価販売や、フードバンク活動への寄贈など二次市場を積極的に利用する、などを挙げた。
    外食産業による取り組みとしては客が飲食店での注文時に、食べたい量を注文できるようにする消費動向に影響を与える天候やイベント開催情報などにもとづき販売、店舗段階での需要予測と加工、製造段階での仕入れや調理計画を連動させるシステムを作る飲食店での食べ残しを持ち帰ることができるようにする、などが挙げられた。
    消費者による改善具体策としては正味期限の意味を正しく理解して計画的に購買、消費する食品を無駄にしない在庫管理を行う残り物をおいしく食べるなど、食材を無駄にしない調理、献立を工夫することを求めた。
    また、こうした運動を後押しする国の取り組みが必要だとして、食品ロスの削減に関する各種情報を農水省のホームページなどで積極的に取り上げ、食材の在庫管理の方法、残り物をうまく利用する調理レシピのアイディアを提供したり、賞味期限と納入期限、販売期限の区別を理解させるパンフレットの作成、配布が必要だとしている。
    農水省は検討会でのとりまとめ結果は、食品ロスの削減に向けて国民が一体となって取り組むための方針とし、今後の施策に反映させることにしている。

(2008.11.27)