農政・農協ニュース

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「農商工連携」で地域農業の活性化を 生産者の手取りアップを実現

    地域経済の活性化と中小企業の支援のため、農水省と経産省は今年から「農商工連携」を推進している。中小企業と農業者が連携した新商品やサービスの開発などに対して、減税や低利融資などの資金面のほか、販路拡大や生産の支援などを行うものだ。4月に「農商工連携88選」を決め、7月の「農商工等連携促進法」成立をうけて、9月には65件の事業計画を認定した。JAグループでは6月に行われた農商工連携サミットで、茂木守全中副会長(当時)が「各JAにも積極的に農商工連携を進めていくよう働きかけていきたい」と語ったが、その現状を農林中金総研基礎研究部の室屋有宏氏の報告から...

    地域経済の活性化と中小企業の支援のため、農水省と経産省は今年から「農商工連携」を推進している。中小企業と農業者が連携した新商品やサービスの開発などに対して、減税や低利融資などの資金面のほか、販路拡大や生産の支援などを行うものだ。4月に「農商工連携88選」を決め、7月の「農商工等連携促進法」成立をうけて、9月には65件の事業計画を認定した。JAグループでは6月に行われた農商工連携サミットで、茂木守全中副会長(当時)が「各JAにも積極的に農商工連携を進めていくよう働きかけていきたい」と語ったが、その現状を農林中金総研基礎研究部の室屋有宏氏の報告から紹介する。

◆ハトムギで10a18万円の収入実現

    4月4日に農水省は「農商工連携88選」を決めたが、その中に岐阜県恵那市や中津川市特産の「恵那栗」を使って、地域全体のブランド化を推進する取り組みがある。
菓子メーカーの(株)恵那川上屋が、JA東美濃の超特選栗部会と連携した事例だ。近場から新鮮な素材を仕入れたいメーカーと、生産量が年々減少傾向にあったJAの意向が合致した。恵那川上屋は特産品「恵那栗」を使った栗きんとんや栗菓子を販売し、平成13年に10億円だった売り上げを19年には16億円にまで伸ばし、栗の生産量も13年77tから19年108tにまで増えた。

「恵那栗」を使った恵那川上屋の栗きんとん(左)と栗山 「恵那栗」を使った恵那川上屋の栗きんとん(左)と栗山
「恵那栗」を使った恵那川上屋の栗きんとん(左)と栗山


    恵那川上屋は栗部会から、通常市場価格の倍近い価格で栗を購入し、生産者も安定収入が得られる。新規就農者や地元の雇用増加にもつながっており、「産地を助けてくれた」と好評だという。
    7月15日の促進法施行をうけて、9月19日には第1回事業計画認定案の65件が発表された。その中で、JAが事業者として名を連ねているのは7事例ある。(表参照)

    地場産ハトムギを使った高機能ハトムギ茶を製造・販売した事例では、農業者がJA氷見市、中小企業がJAの子会社である(株)JAアグリひみと地元飲料メーカーという組み合わせで、農業者と中小企業のどちらにもJAが絡んでいる珍しい例だ。
    地産地消の地域限定商品ということで認知度が高まり、売上金の一部を市に寄付したことで地元市民の共感も呼んだ。地元農家へのメリットも大きく、通常kg300円ほどのハトムギをJA氷見市はkg700円で全量購入し、そこに産地作り交付金を加えると10a(収量約200kg)あたり18万円ほどの収入になる。機械や労賃など全ての費用を控除しても、生産者は手取り10万円ほどを確保できる計算だ。「農家が栄えれば農協も栄える」という理念のもと、さらに氷見米、氷見牛などの地域ブランド化にも取り組む予定だという。

◆「商業性よりも理念が大事」 連携成功のポイント

    室屋氏は農商工連携のポイントは「今あるものを、どう磨くか」だという。
    新商品や新サービスとは、特産品づくりや流通・販売方法の新しい仕組みの組み合わせ次第なので、「ハイテクで新しいものを作り出すよりも、普通にある地域資源をどう活かすかが重要」となる。地域資源を持っているという意味では、JAの持つ可能性は大きい。
    しかし同氏は「農業者と中小商工業者には隔たりが大きい」と、課題もあげる。メーカー側は、農産物の安定供給や品質管理への不安を抱えている。また商工業者から、「農協は敷居が高い」という声をよく聞くらしい。「どこかがマッチングサポートをしてくれなければ農業者と出会えない」と、農商工連携に意欲があっても生産者と話し合いの場がないという商工業者の不満を解消しなければ、連携は発展していかないだろう。
    農商工連携の成功について、「どれだけ儲けられるかという商業性よりも、地域の底上げをしたいという明確な理念や目的の方が重要。さらにキーマンとなるリーダーの存在も不可欠だ」と指摘している。

◆JAは連携のパートナーとして活躍
    
    中小企業と農業者の連携を支援するのは、「地域力連携拠点」「中小企業向けハンズオン支援事務局」「食品産業クラスター協議会」だ。
    「地域力連携拠点」は商工会議所や県中央会などによる業者と生産者のマッチングサポート窓口で、現在全国で316か所ある。その内、5つがJA系統だ。
    当初、経産省はJAや中央会に地域力連携拠点として活躍することを期待していたが、現在JAグループは連携拠点としての活動は重視していない。JA全中では、「農商工連携の本質は中小企業支援。JAが中心(連携拠点)となって、業者のマッチングに積極的に取り組む方針はない」という。
    しかし地域の活性化に貢献するのはJAの役割としてJA綱領にも明記されており、連携の取り組み自体は重視している。JAグループとしては、「むしろ行政や地方自治体がもっと積極的に連携拠点となり、JAは連携そのもののパートナーとして活躍したい」と考え、「すでに自前で加工所を作るなどして新商品を開発しているJAも多くあるが、地域活性化のため地元企業などと共同で取り組むのは素晴らしいことだし、全中は今後も各JAが農商工連携に取り組めるよう支援していく」と、今後の展開に期待している。

(2008.12.19)