農政・農協ニュース

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農薬の作物残留試験例数主要作物は6例に

−農水省

    農水省は12月18日に開催された「第5回農薬登録制度に関する懇談会」で、農薬の「作物残留試験の例数等改訂についての考え方」を提案した。従来、農水省は「作物の生産量、リスクの程度に応じて決定することとし、主要作物は8例、準主要作物は4例、マイナー作物は2例」を提示してきていたが、これまでの懇談会での議論を踏まえ、次の通り提案を行った。 ○主要作物 6例以上(22作物) ・生産量が30万トン以上の作物(稲・小麦・馬鈴薯・大根・キャベツ・たまねぎなど18作物) ・生産量が3万トン以上30万トン以下の作物で、1日の農産物摂取量が1%以上のもの(主要な栽培...

    農水省は12月18日に開催された「第5回農薬登録制度に関する懇談会」で、農薬の「作物残留試験の例数等改訂についての考え方」を提案した。従来、農水省は「作物の生産量、リスクの程度に応じて決定することとし、主要作物は8例、準主要作物は4例、マイナー作物は2例」を提示してきていたが、これまでの懇談会での議論を踏まえ、次の通り提案を行った。
主要作物 6例以上(22作物)
・生産量が30万トン以上の作物(稲・小麦・馬鈴薯・大根・キャベツ・たまねぎなど18作物)
・生産量が3万トン以上30万トン以下の作物で、1日の農産物摂取量が1%以上のもの(主要な栽培地域に偏りのあるものは除く)(ほうれん草・里芋・柿・大豆の4作物)
準主要作物 3例以上(30作物)
・生産量が3万トン以上30万トン以下の作物で、1日の農産物摂取量が1%以下のもの(かぼちゃ・メロン・ぶどう・山芋・イチゴなど27作物)
・「生産量が30万トン以上の作物で、主要な栽培地域に偏りがあるもの」または「生産量が3万トン以上30万トン以下の作物で、1日の農産物摂取量が1%以上の作物で、主要な栽培地域に偏りがあるもの」(てんさい・さとうきび・こんにゃくの3作物)
マイナー作物 2例以上
・生産量が3万トン以下の作物(アスパラガス・さやえんどう・カリフラワーなど多数
超マイナー作物 試験例数なし
・生産量が3000トン以下の作物
このうち、「主要作物」については「6例」がすでに提示されていたが、今回の懇談会で「準主要作物」について「3例」とする修正案が提示された。

◆稲・小麦6例、他の主要作物4例を提案 工業会

    これに対して農薬工業会は、「年間生産量が300万トン以上の作物で、食品摂取量に対する割合が10%以上」の稲と小麦を「超主要作物」とし、試験例数を「6例」に。この2作物以外の「主要作物」については「4例」、「準主要作物は3例」「マイナー作物は2例」を提案した。
    農薬工業会によると、農水省案で「作物毎に登録されている農薬数で補正した有効成分当たり平均例数」は5.05となるが、農薬工業会案だと3.62となる。農水省案だと「新規/適用拡大のために例年要求される試験数は約1200件(600課題)から3030件に増加し、農業現場で必要とされる防除資材としての農薬の開発が困難となることが予想され」、開発チャンスが現行の約50%に縮小すると指摘。
    したがって、農薬工業会案の方が農業現場への混乱を最小限に留めることが可能であるとした。

◆試験完了まで大幅に時間とコストが

    懇談会では、実際に試験を行う日本植物防疫協会や県の試験場の委員から、試験例数が大幅に増えることについて「がんばってやっても倍」「予算がひっ迫し人が減っているので仕事を増やすことは困難」などの意見が出され、例数が大幅に増えた場合には、現行では2年間で試験が完了しているものが「4年程度を要してしまう事例が数多く発生するおそれがある」こと。「同じ例数でも年数をかけて実施すればコストは単年の場合よりもはるかに増加する」などの意見が出された。
    また既登録農薬の取り扱いについて、農薬工業会は「現行の制度(2例)でも安全性は担保されている」ので、「急性曝露評価において精密な曝露評価のために追加実施する場合」を除いて「追加試験は不要」との考えを示した。
    これに対して農水省は「(農薬取締法の)5年後見直しの検討項目にも関連する議論の中で行っていく」との見解を明らかにした。
    こうした検討結果を踏まえて、次回の懇談会でさらに検討を深めていくことになる。

(2008.12.26)