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遺伝子組み換え作物の栽培面積は2015年には2億hayと予測

−国際アグリバイオ事業団

◆アジア・アフリカ諸国の政策意欲 遺伝子組み換え作物の知識と技術の導入・普及をするための国際的な非営利団体である国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は2月6日に「世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培栽培に関する状況:2008年」(ISAAA概要書第39号:以下「概要書」と記す)を発表した。 ここで発表された現在の状況については、この概要書の著者でISAAA理事会会長(創設者)のクライブ・ジェームス氏が来日し、2月25日に特別記者説明会(バイオ情報普及会主催)を行った。(関連記事) このなかでジェームス会長は今後の世界における遺伝子組み換え作物(GM作物)について次のように予測している。 ISA...

◆アジア・アフリカ諸国の政策意欲

遺伝子組み換え作物の知識と技術の導入・普及をするための国際的な非営利団体である国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は2月6日に「世界の遺伝子組み換え作物の商業栽培栽培に関する状況:2008年」(ISAAA概要書第39号:以下「概要書」と記す)を発表した。
ここで発表された現在の状況については、この概要書の著者でISAAA理事会会長(創設者)のクライブ・ジェームス氏が来日し、2月25日に特別記者説明会(バイオ情報普及会主催)を行った。(関連記事)
このなかでジェームス会長は今後の世界における遺伝子組み換え作物(GM作物)について次のように予測している。
ISAAAでは、GM作物が最初に商業化された1996年からの10年間(2005年まで)を第1期と位置づけ、2006年から2015年までを第2期と位置づけている。
第2期の初めの年である06年の栽培国は22だったが、第2期の最終年である15年には40か国に。またGM作物の生産者数は1000万人から2000万以上に、栽培面積も06年の1億haから2億haにといずれれも倍増すると予測した。
その理由として、新たな「技術の動向」と、主要発展途上国である中国・インド・ブラジル・アルゼンチンやアフリカ諸国での強力な「政策意欲」をあげた。
「政策意欲」については中国の温家宝首相が「食料問題を解決するためには、ビッグサイエンスと技術に大きく依存しなければならない。それは遺伝子組み換え技術」と述べたことや、ケニアの農業大臣が「バイオテクノロジーはアフリカの食料安全保障の増強を可能にする」と述べたことなどをあげた。

◆今後の普及のカギはGMイネと旱魃に強いGM作物

「技術の動向」としては、近年、2つの害虫抵抗性と1つの除草剤耐性をあわせもつというように複数の形質をもつ「スタック品種」の栽培が急速に増えているが、「8個の異なる遺伝子の導入により数種類の害虫抵抗性と除草剤耐性を備えた」トウモロコシ(SmartStax)が「米国で2010年に商業化される予定」になっているという。
「将来のスタック形質は、害虫抵抗性や除草剤耐性、旱魃耐性のような農業形質に加えて、大豆における高いオメガ脂肪酸の生産やゴールデンライスによるビタミンAの強化といった新たに産出された形質からなるであろう」。
なかでもいま、商業化可能なものでもっとも重要なものは「世界の貧しい人びとにとってもっとも重要な食用作物である」イネの遺伝子組み換えだという。GMイネは現在、「中国で広範囲に試験栽培され」中国当局の承認を待っている害虫、病害抵抗性のものと、12年に実用化される予定のゴールデンライスがあるという。
GMイネの普及とともにGM作物の普及を促進する要因としてジェームス会長は「旱魃耐性形質の開発が世界的にさらに遺伝子組み換え作物を導入するきっかけとして有力なものになると考えられる」とし、12年には旱魃耐性トウモロコシが実用化されると語った。
そして第一世代のGM作物は病害虫や雑草から作物を守り「損失を減らして収量を上げる」ことを実現したが、第二世代GM作物は「さらに収量を上げるという動機付けを農業生産者に与える」とし、今年商業化されるRR2大豆では、収量増を担う遺伝子が存在することで7〜11%の生産増となることをあげた。

◆非遺伝子組み換え作物の安定的確保は困難に

このほか、世界的には中規模な栽培規模ではあるが、ジャガイモでは害虫・病害耐性を備えたものや工業用に品質を変えたもの、機能形質と農業形質を持ったサトウキビ、病害耐性バナナなどが15年までに承認されると予想しているとも。さらにトマト・ブロッコリー・キャベツ・オクラでもGM開発が進められているとも話した。
GM作物商業化の最初の10年はアメリカ大陸が主役だったが、その後の10年は「アジアとアフリカで顕著な増大を特徴とするものになる」と予測した。
前回の記事で、19年度の「食料・農業・農村白書」は「非遺伝子組み換え作物に対する需要が高いわが国にとっては今後、その安定的な確保が困難となる可能性も考えられる」と書いていることを紹介したが、これは「可能性」から現実のことになりつつあるのではないだろうか。安全で安心な食料を安定的に確保するために何をしなければならないのか。消費者も含めて真剣に考えなければならない時期にきているといえる。

(2009.03.05)