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米政策でシミュレーションを公表

 -農水省

農林水産省は4月22日、米の生産調整に関する第一次のシミュレーション結果を公表した。生産調整について「強化」、「現状維持」、「緩和」、「廃止」の5つのシナリオで米価や生産者手取りなどを試算した。 生産調整を廃止して220万haの作付けが行われた場合は市場価格は60kg7506円にまで下がることが示された。ただし、政策体系や助成水準などによって結果は変わる。冷静で慎重な議論が必要だ。   ◆シナリオ1‐生産調整10万ha強化 シミュレーションは20年産の主食用米作付け面積約160万haをベースに試算した。米価の初期値は60kg1万5075円。農家手取りは同1万4078円。 シナリオ...

農林水産省は4月22日、米の生産調整に関する第一次のシミュレーション結果を公表した。生産調整について「強化」、「現状維持」、「緩和」、「廃止」の5つのシナリオで米価や生産者手取りなどを試算した。
生産調整を廃止して220万haの作付けが行われた場合は市場価格は60kg7506円にまで下がることが示された。ただし、政策体系や助成水準などによって結果は変わる。冷静で慎重な議論が必要だ。

 

◆シナリオ1‐生産調整10万ha強化

シミュレーションは20年産の主食用米作付け面積約160万haをベースに試算した。米価の初期値は60kg1万5075円。農家手取りは同1万4078円。
シナリオ1は、作付け面積を10万ha減少させ、中長期的にも生産調整により米価を維持する場合。
施策は麦、大豆のほか米粉用米、飼料用米などにも十分な助成を行い、主食用米の過剰作付けを防止するというもの。また、現行の担い手を対象にした水田・畑作経営所得安定対策と、担い手以外の生産調整実施者を対象とする稲作構造改革促進交付金(稲構)は継続する。
この場合、1年目の生産量は856万tから783万tに減少、市場米価は60kg(以下同)1万8365円で農家手取りは1万5493円となる。短期的には米価は2万円を超す。
その後は需要減少に応じて生産量を抑えて米価と手取りを維持することから、10年目には作付け面積144万ha、生産量は752万tとなる。

◆シナリオ2‐現状維持

20年産と同程度の生産調整を維持し、作付け面積は160万haとする。
施策は産地づくり交付金や水田・畑作経営所得安定対策、稲構は継続。
1年目の生産量は835万tで米価は1万5866円、農家手取りは1万3663円となる。短期的に米価は1万6314円になる。
その後は需要減にともない10年後には作付け面積156万ha、生産量は815万tとなる。現状維持の生産調整を継続するものの、シミュレーションでは市場価格は1万4632円、農家手取りは1万2691円に下がるという結果が示された。

◆シナリオ3‐10万ha緩和

シナリオ3は、麦・大豆・飼料作物と米粉用米、飼料用米について現行施策と同様に助成を行うが、転作の定着度の低い調整水田など10万haで主食用米作付けが増え170万haとなる場合。
1年目の生産量は887万tで米価は1万3804円。農家手取りは1万3704円となる。その後は需要減で10年後には作付け面積は160万ha、生産量は836万tとなる。米価は一時、1万4000円台となるが、10年後には1万3506円。農家手取りは1万1832円となる。

◆シナリオ4‐30万ha緩和

シナリオ4は麦・大豆・飼料作物への助成は現行の2分の1程度とし、担い手を対象とする水田・畑作経営所得安定対策は継続するものの、非担い手を対象にした稲構は廃止する。転作の定着度が低い調整水田のほかに、担い手に集積されていないバラ転作の農地では主食用作付けが行われるとみて30万haの拡大を見込んだ。
1年目の生産量は991万tとなり、米価は1万648円となる。農家手取りは1万3755円。米価は短期的には9417円となる。
その後は需要減で10年後は168万ha、生産量は874万tとなる。米価は1万1768円。農家手取りは1万260円となる。

◆シナリオ5‐廃止で60万ha増

シナリオ5は生産調整の廃止シナリオ。産地づくり交付金や稲構など生産調整関連対策は廃止。担い手を対象とする水田・経営所得安定対策は継続する。
生産調整を廃止することで転作の定着度の高い野菜や果樹を除く60万haで米生産が戻ると見込んだ。作付け面積は220万haとなる。
シミュレーションでは1年目の生産量が1148万tとなり、米価は7506円に下落。農家低取りは1万3788円となる。短期的には5894円となる。
その後は需要減により10年後には178万ha、生産量は929万tとなる。米価は9721円、農家手取りは8506円となる。
農林水産省は、農政改革関係閣僚会合が17日に決定した農政改革の方向と今回のシミュレーション結果について5月22日まで意見募集を行っている。

(2009.04.28)