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シミュレーションは非現実的 茂木JA全中会長が主張

 新基本計画を検討している食料・農業・農村政策審議会企画部会は6月10日に第10回会合を開き、生産調整の緩和・廃止などのシナリオで将来の米価水準などを予想した米政策シミュレーションを議論した。

 JA全中の茂木会長はシミュレーションについて「生産調整を緩め米価を下落させる内容。まじめに取り組んでいる生産者に大きな不安を抱かせるもの。生産現場を混乱させるシミュレーションを田植えの時期に公表したのは大問題」と批判する意見を表明した。
 また、シミュレーションの前提は「持ち越し在庫が翌年に解消されるなど非現実的なもの」と指摘し、過去の経験からも一度過剰米が発生してしまうと在庫米の積み上がりや産地間のたたき売りなどが発生し、長期にわたる米価低迷が続くとし、「シミュレーション以上の大変な事態が発生することが想定でき、社会的・経済的損失は計りしれず農村地域は壊滅的な被害を受ける」と問題点をあげた。
 そのうえで米の需給と価格安定のためには生産調整は必要であり、計画生産と水田フル活用に取り組む担い手が安定した経営ができるための、転作作物支援、万全な経営所得安定対策の確立が必要だと訴えた。
 また、一部のマスコミ報道で生産調整の見直しの方向を決めたと報道されていることについて「農水省は報道内容を否定しているが、国民的な議論を行っていく、としながら生産調整の緩和や米価引き下げを方向づけるような情報がリークされ結論を誘導しようとしているかの印象を与える事態は到底認められない」と強く批判。
 国民的な議論を行うことを否定はしないものの、生産現場の実情と意見が十分尊重されること、情報管理も含め、現場に悪影響を及ぼすことのないよう「抗議の意味も込め強く求める」と表明した。
 茂木会長の指摘に対し農林水産省は第1次シミュレーションに続く第2次の検討作業を行っていることは事実だが、「現時点でのとりまとめはない」と回答した。
 そのほかこの問題についは▽「10年後、20年後の農業をどうするかという大きなビジョンがあってのシミュレーションではないか」▽「いろいろな課題をテーブルに乗せるべき。生産調整の見直しの時期に来た」▽「米しかできない地域、米以外もつくれる地域など地域特性を踏まえた議論を行う必要がある」▽「第2次シミュレーションでは農家への具体的な支援策と価格、生産の見通しを示すべき」▽「農業者の推移のほうが心配。大量に余るようなことはなくてむしろ足りなくなるのではないか」などの意見が出された。

(2009.06.09)