農政・農協ニュース

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肥料成分は蓄積過剰

農水省の検討会が中間報告

 これまでの化学肥料の多用などで農地土壌には過剰に肥料成分が蓄積されているとして肥料高騰に対応する施肥改善に当たっては全国的な土壌診断をする必要があるーーとする報告書を農水省の検討会が7月中旬に中間取りまとめした。検討は有識者・JAグループ代表らを委員として3月から行われた。

 報告は肥料価格の動向について、平成21肥料年度に高度化成肥料で24%値下げしたものの、多くの品目で高騰前よりなお2〜3割高い状況にあり、今後も世界的な肥料需給は楽観を許さないとした。
 農業経営費に占める肥料費の割合は最も低い水田作と果樹作で1割未満だが、コメの生産費に占める肥料費の割合を推計すると21年産は前年産よりも3割程度の上昇が見込まれるなど21年産は各作目とも肥料費が経営を圧迫すると予測した。
 土壌の現状については、化学肥料の多用などでリン酸とカリを中心に成分が土壌に過剰蓄積、また野菜畑などではたい肥の成分を考慮しないまま施用して過剰蓄積している場合もあるーーとした。

 

水田土壌に蓄積している有効態リン酸の推移
 
◆土壌診断を普及
 
 今後の対応方向では農業者が定期的に土壌診断をして施肥設計を見直すようにする普及活動の強化その土壌に応じて施肥量を減らしても収量や品質に影響がないことを納得してもらう実証展示ほの設置減肥基準や地域の診断結果を踏まえた施肥量を栽培ごよみに掲載するーーなどを挙げた。
 またたい肥に含まれる成分を考慮した施肥低減の推進が重要診断の簡易・低コスト化を図るためJAや農業者グループなどが使う分析キットや簡易分析機器の研究が求められるーーともした。
 報告書は作物別に施肥の現状と課題をまとめているが、施肥低減技術の導入については次の通り。
  【稲作】
 側条施肥田植機や肥効調節型肥料などを活用した栽培体系を確立して現場に示すと共に育苗箱全量施肥技術については実証ほを設置し、既存技術との比較検討を進めつつ、普及の可能性を検討する必要がある。
 【北海道畑作】
 L字型肥料などへの変更作条施肥の実施▽単肥の自家配合BB肥料や高成分肥料などの利用たい肥や緑肥作物の導入などの作物共通的な技術や、各作物において導入できる各種技術がある。
  【露地野菜】
 肥効調節型肥料や、うね立て同時部分施肥機など、それぞれの作目に対応した施肥低減技術を改善しつつ栽培体系を確立し、普及を図っていく。
  【施設野菜】
 肥効調節型肥料を用いた栽培法や育苗ポット施肥など作目に対応した低減技術を改善しつつ普及していく。
  【果樹】
 肥効調節型肥料や灌水同時施肥など、これまでに実用化された技術を改善しつつ普及。
  【茶】
 機能性肥料、樹冠下点滴施肥技術などを改善しつつ普及。
 【牧草・飼料作物】 「草地におけるふん尿利用・施肥設計ソフト」、成分調整型たい肥などを改善しつつ普及していく。
 

(2009.07.31)