農政・農協ニュース

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産地集出荷施設を販売戦略の司令塔に  民間の野菜研究会が政策提言

加工・業務用の需要拡大に対応

 野菜産地の集出荷施設は単なる施設ではなく、今後は販売や輸送の戦略を策定し、これに基づいて仕事をする産地拠点に発展させていく必要があるーとの政策提言を民間の青果物生産・流通研究会がまとめ、8月25日に農水省へ提出した。

 野菜消費の過半が加工・業務用となった中で法律や諸制度は未だに生食を前提としており、これの抜本的転換が求められるとして、研究会はニーズに即した「生産と流通のあり方」について昨秋から毎月議論を重ねた。
 メンバーはJA、全農、流通、加工、農機などの代表で運営委員会委員長は東京農工大学の渋澤栄教授。

◆競争でなく連携を

 提言は、農協などへの委託出荷が大勢だったころと違って、現状は量販店などとの相対取引の比重が高まっているとして、農協などは多様な販売ルートを活用し、自ら販路開拓や価格交渉を行う必要があるとした。
 また従来は生鮮消費に対応し、産地ブランド化などが重視されて産地間競争が激化したが、加工・業務用では同質の野菜の安定供給が要請される。このため従来型の産地間競争から脱却し、産地間連携を志向する複数産地の通年供給経路を構築する課題も挙げた。
 野菜流通の特徴は小売価格の過半を流通経費が占めており、生産者としては、いかにこれを低減して所得向上を図るかも喫緊の課題となっている。
 昨年の原油高を機にトラック輸送だけでなく、鉄道・フェリーなどへのモーダルシフトも含めた複数の輸送システムの効率運用も指摘した。
 予冷・貯蔵施設は生産者や食品製造業者が設置しているが、卸売市場には施設がなく、段ボールの野積みがよく見受けられる。今後は各場面に施設を設けて冷蔵の連鎖を切らないようにすることも重要とした。
 出荷容器は段ボールが主だが、今後は相手先が明確な契約取引を中心にして通い容器、特に加工・業務用では大型の金属製コンテナの活用によるコスト低減や、通い容器の規格統一化も提起した。

◆鉄道の効率利用も

 提案は3本柱からなる。概要次の通り。
 産地拠点を核とした生産・流通システムの構築=集出荷施設が司令塔的施設となるよう既存の施設などに多様な機能を付加させたモデル事業を提案する。
 加工・業務用野菜では産地間連携の円滑推進へ、産地間や様々な実需者との情報連絡を図るいわゆる「野菜出荷販売戦略組織」を設置する必要がある。
 産地リレーに対応した移動型選果予冷施設など冷蔵、冷凍施設の整備が必要である。
 基幹物流はJRや船による大ロット流通とし、需要先への配送は多機能な大型配送拠点を建設し、トラック便などを利用する。
 加工・業務用野菜の需要に対応した支援施策の推進=複数産地と複数実需者を接続する「中間事業者」の支援、中間流通拠点の整備、集配施設と輸送手段の共同利用促進、低コスト化と衛生管理強化を図る。
 現行の野菜価格安定制度は大産地が対象だが、今後は産地間連携により一定量を通年供給できる産地も指定産地になれるよう検討すべきである。
 指定産地が少量多品目生産に取り組めるような支援措置も必要。
 物流・情報拠点としての市場機能の構築=市場の物流機能を高度で多機能な施設に整備し、加工・業務用野菜の基幹集配施設とすることが必要。
 市場の冷蔵・冷凍施設を整備し、コールドチェーン機能を確立する必要がある。

(2009.08.28)