農政・農協ニュース

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生物農薬による防除で活発な議論  日本バイオ協講演会

 フェロモン剤を含む生物農薬を中心にした総合的な防除体系の確立をめざす日本バイオロジカルコントロール協議会が、年に一度、テーマを決めて開催している研修会(講演会)が、10月8日、全農営農・技術センター(神奈川県平塚市)で開催された。

 当日は、台風18号が上陸し本州を縦断したため首都圏の鉄道の多くが昼過ぎまで運休。平塚への唯一ともいえる公共交通手段である東海道線も昼過ぎまで止まるという悪条件にも関わらず、予定より1時間遅れで始った会場には、5人の講師をはじめ60名近い参加者があり、この講演会に寄せる期待の大きさを感じさせた。
 講演会はまず、有江力東京農工大大学院共生科学技術研究院教授による「微生物殺菌剤の現状と今後の展望」から始った。
 そして、福島県農業総合センター生産環境部の荒川昭弘氏による「昆虫病原性線虫製剤による枝幹害虫防除」
 埼玉県農林総合研究センター病害虫防除技術担当の畠山修一氏による「イチゴのカブリダニによる防除」。
 岐阜県農政部技術支援担当の杖田浩二氏による「コナジラミ類に対する気門封鎖剤と微生物殺虫剤の混用による防除の可能性」
 神奈川県農業技術センター果樹花卉研究部兼環境研究部の小林正伸氏による「神奈川県におけるIPM研究の歩み」
の4題が講演された。
 有江教授は、これまでの微生物殺菌剤の研究・開発の歩みと現状を分析。そのうえで、「バイオコントロールは生きた微生物を用いるので安全である」という単純な考えは誤りであり、危険な考え方であると指摘。そして「微生物殺菌剤の効果・安定性を増すため、あるいは安全性を担保するための基礎的知見としても作用機作(MOA)を明らかにしておく必要がある」とした。
 また有江教授は最近、国の肝いりで促進されている「植物工場」で「新たな病虫害が顕在化するのではないか」という懸念があるので「植物工場用病害虫コントロール技術の開発研究を進めていく必要がある」と指摘した。
 各県のセンターからの講演は、いずれもそれぞれの地域で問題となっている病害虫にどのように生物農薬を活用した防除技術を確立してきたか、あるいは確立しようとしているかという実践的な内容で、質問もまた実践的なものが多く、参加した各県の試験所・防除所関係者にとって非常に有意義な内容だったのではないだろうか。

(2009.10.09)