農政・農協ニュース

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直接所得補償制度の充実を  日本生協連が意見書

 日本生活協同組合連合会は、現在、政府が進めている新たな食料・農業・農村基本計画に関する「意見書」をまとめ、このほど赤松農水大臣あてに提出した。

◆国の最重要課題に

 意見書では日本農業が危機的な状況にあるとして「このままでは食料の自給力がさらに弱まり国民の命と安全すら脅かされることになると危惧する。国として最重要課題に位置づけ早急に自給力を強化し次世代に継承していかなければならない」と提起し、これまで農政が自給率向上を実現できなかった原因を明確にしたうえで、実効性のある農業政策が期待されているとした。
 また、消費と生産は「本来密接に関係し支え合うもの」であり、その絆がほころびることになればいずれも存立しなくなるとして、生協として「消費から生産のあり方」を考えたことを強調している。

◆多様な担い手を支援

 意見書では食料自給率の数値目標は提起していないが、カロリー自給率に加え、生産額ベースや重量ベース穀物自給率、飼料自給率など多様な指標で自給力強化策の実現程度を評価していくべきだと提案している。
 ただ、すべてを国内生産でまかなうことは現実的に困難であることから、「海外関係国と連携し日本の優れた農業技術の提供、支援を通じ・・・国際協調もはかり食料調達の方途を多様に確保していく」ことも求めている。WTO交渉については世界的な食料危機で「食料主権」が顕在化したことをふまえ、わが国の食料安保体制を充実する視点で臨むべきだとしている。
 担い手支援では、「財政投入による直接所得補償制度の充実」を求めた。また、「兼業農家」も日本農業を支え地域社会に貢献する一員だと強調し、生産意欲を失うことがないよう生産コストを補う制度などが必要だとしている。
 
◆生産調整の見直しも

 意見書では、米の生産調整によって「国内に潜在的にある自給力が活かされていない」とし、また、現状では米価下落に歯止めをかけることができていないことから、「直接所得補償制度の充実を前提に(生産)調整が最小限で済む方向での総合的見直し」を提案した。
 直接所得補償制度の充実など財政投入のあり方は、自給力強化を支えるよう、担い手、農地、農業技術(環境保全型農業など)の3つの要素を重点対象とした分かりやすい制度を求めた。また、「関税や生産維持のコストを商品価格に反映させている消費者負担施策が…負荷になっている現状を広く知らせるべき」と強調し、そのうえで個人・法人の税金を財源とする納税者負担政策の重点を移していくべきと提案した。
 意見書は日本生協連理事会のもとに設置された「食料・農業問題検討委員会」で議論し全国6か所の討論会も開いた。同検討委員会の委員長は三橋幸夫・コープ中国四国事業連合理事長。委員は、前濱喜代美(コープさっぽろ理事)、伊藤明世(コープ東北サンネット事業連合常務)、赤松光(コープネット事業連合理事長)、山本伸司(パルシステム連合会常務執行役員)、安藤弥生(ユーコープ事業連合常務執行役員)、徳升孝司(東海コープ事業連合常務)、福永晋介(京都生協)、濱田芳郎(コープこうべ常務)、原田省二(コープかごしま理事長)、大泉一貫(宮城大副学長)、中嶋康博(東大院教授)、石川廣(生協総研専務)、芳賀唯史(日本生協連専務)、飯村彰(同常務)。

(2009.11.05)