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【WTO閣僚会合・4】2010年妥結「そう簡単ではない」 WTO閣僚会合で赤松農相

 WTO閣僚会合に出席している赤松農林水産大臣は12月1日には、分科会に出席したほかウォーカー農業交渉議長やボエルEU農業委員と個別会談した、少数国閣僚夕食会に参加した。各国の閣僚の議論を聞いて「2010年中の妥結を、とは100%みんな言う。ただ、そう簡単ではないなと感じた」などと印象を話した。

◆世界の食料安保を訴え

 午前の分科会で赤松農相は発言。一昨年からの食料危機の問題について「さまざま形態の農業が共存することが世界の食料安保のために必要」と話し、農業交渉は食料安保と農業の多面的機能を重視し、「各国の農業が相互に発展し合うことができるような、各国のセンシティビティに配慮したルールづくりが行われることを切に望む」と話した。
 また、今後の交渉の進め方について「これまでの交渉を通じてわが国をはじめとする食料輸入先進国にとっては、もはや裁量の余地はほとんど残されていない状況に至っている。妥結のためには各国にとって困難な問題が解決されるだけの弾力性・柔軟性が必要だ」と強調した。
 分科会ではこの発言に対する反論はなかったという。


◆交渉の進め方で思惑さまざま

 分科会に先立って行われたウォーカー農業交渉議長との会談では、議長は重要品目の数や扱い、上限関税の問題については「議論が進んできている」との認識を示した。しかし、関税割当の新設問題については議論が進んでいないと指摘した。
 ただ、重要品目の問題で議論は進んでいるといっても具体的な数字が詰められているわけではなく、関割新設問題も含め日本側は「上級事務レベルで詰めていくべき」と指摘した。
 ボエルEU農業委員との会談で、ボエル氏は日本の新政権が戸別所得補償制度を軸とした新しい政策を検討していることに触れ、WTO協定上、問題にならないかと赤松農相に質問、「EUのデカップリング政策を参考にしてほしい」と述べた。
 赤松農相はEUをはじめいいところは見習っていきたいと応じ、戸別所得補償制度がWTO協定に「心配をかけることがないような配慮は十分にしていきたい」と話すとともに、政策の基盤として日本が食料自給率50%をめざす努力をすることや「世界各国の農業の再生を重視していく」とWTO交渉に臨む姿勢を示した。
 夜に開催された少数国閣僚夕食会は豪州とインドネシアの主催。
 話題のひとつが今回閣僚会合で示した「来年の第一四半期までに交渉の現状評価(ストックテイキング)をすること」だったという。
 G10のようにこれを事務レベルで現状を評価することとと捉えて、交渉を整理すべきだとする立場と、閣僚会合を来年3月にも開くべきだと早期妥結をめざす意見など各国の主張はさまざまだったという。
 また、夕食会には米国も招待されたが、カーク米通商代表は欠席した。夕食会では「やはり米国抜きでは交渉はできない」との指摘や「(来年は)中間選挙があるからなかなか態度は表明しないのでは」といった声もあがった。ラミー事務局長も「米国が来てくれればもっといい会議になった…」と漏らしたという。
 今回の閣僚会合で赤松農相は「昨年12月の議長テキスト(08年12月6日の改訂議長テキスト)に基づいて交渉する。後戻りしては何のための1年だったかということになる」と交渉のベースを議長テキストすることを主張した。改訂議長テキストの作業文書には重要品目数について日本が「8%」を主張していることが記載されている。この点はG10閣僚声明でも強調されている。
 そのうえで交渉について「何が課題か事務レベルで詰めて、最後は大臣が判断できる状況をつくることが大事だ」とし、事務レベルでの交渉を続けるべきと強調した。
 会合全体の印象として「2010年中の妥結は100%みんな言う。積み上げてきた成果を後退させてはだめだともほとんどの国が言う」と話し、来年第1四半期のストックテイキングの必要性も異論は出なかったとした。
 ただ「総論賛成、各論反対」のような印象を受けたとし2010年中の妥結は「そう簡単ではないなと感じた」と現地で述べた。

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(2009.12.03)