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危機を乗り越えて未来への展望を開く―「第11次中期計画」を議論  日本生協連全国政策討論集会

 日本生協連は1月14、15日に、ホテルパシフィック東京で全国の生協の代表者らが参加し「2010年全国政策討論集会」を開催した。今年の主要テーマは、2010年から12年までの「第11次全国生協中期計画」(11次中計)を検討することだ。

2010年全国政策討論集会◇赤字からの脱却が課題

山下俊史会長 07年から09年度にかけての「10次中計」は「日本生協の2010年ビジョン」のアクションプログラムとして位置づけられてスタートしたが、08年1月の餃子中毒事故を始めとする商品事故によって、事業連帯の強化など多くの課題を先送りし、商品の品質保証体系の再構築など信頼回復の取り組みを最優先せざるをえなかった。
 さらに、08年秋には米国発の世界的な金融危機が日本経済を直撃し、日本の生協は「経済・くらし・事業の3つの危機」に直面することになる。
 この間、組合員は増えたが(06年度比106.3%)、供給高は増えず、さらに生協法改正で共済事業を分離したこともあって「全国合計の経常剰余率は3年間で1%以上悪化し、0.6%(09年度推計)まで低下」した。
 とくに店舗事業では、「多くの生協が赤字構造から脱却できていない」。生協事業を牽引してきた個配事業も伸長率が「2桁から1桁前半へと鈍化し、班配も前年割れを続け、宅配事業全体では収益性が悪化」している。

(写真)山下俊史会長

◇個配事業で1兆円めざす

 こうした状況を踏まえて10年度からの「11次中計」では「経済・くらし・事業運営の3つの危機」を共有し、つぎの3つの視点をもって取り組んでいくとしている。
 第1の視点は「生協への信頼再形成」だ。餃子事件を始めとする一連の商品事件で「崩れはしなかった」が大きく揺らいだ「生協の商品と組織に対する信頼を取り戻す」(矢野和博専務)ことだ。
 第2の視点は「経済・くらし・事業運営の危機への対処」だ。経済が「短期的に好転することは望めないと認識」したうえで、「多くの組合員・消費者の期待に応え、品質と価格を共に重視する方針と組合員拡大路線を堅持」する積極的な対応をしていく考えだ。一方では徹底したコスト対策も行い健全な経営の実現もめざしていく。
 また、これまでの経営を支えてきた「個配事業2桁伸長」「商品共同開発拡大による値入アップ」「共済事業の経営貢献」などの基盤が変化する中で「経営基盤の強化が必要」であり、個配は急成長から安定成長へ入ったが「伸長の余地はまだ大きい」とし、目標として「1兆円」を目指していく。

◇飛躍への力を蓄える「踊り場」か

 第3の視点は「危機を克服して未来への展望を開く」だ。従来、生協陣営は長期的なビジョンを掲げ、その実行プランとして3年ごとの「中計」をたててきたが、今回は長期的ビジョンを示さず、この11次中計を「10〜15年後のありたい姿を描いた」「長期ビジョンを策定し、その実現にむけて足元を固めるための中計」と位置づけた。山下俊史会長が開会の挨拶で「現局面では、生き残りこそが第一義であろうと思う」と語ったように、この危機を乗り越えて2020年、2025年の姿を描こうということだろう。
 長い間、日本の生協をみてきた人が「いまは踊り場にいる」との感想をもらしたが、協同組合としての生協が次のステップに飛躍する力を蓄えることができるかどうかが問われる3年間であるともいえる。いみじくも山下会長が記者会見で語ったように、2011年は日本生協連創立60周年であり、12年は国連で国際協同組合年と決議された年でもある。

(2010.01.18)