農政・農協ニュース

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穀物需給、ひっ迫継続 世界の食料需給見通し

 農林水産省の農林水産政策研究所は2019年における世界の食料需給見通しの予測結果を2月3日に公表した。

 この予測は同省が開発した「世界食料需給モデル」によるもので昨年から10年後の食料需給見通しを公表、毎年更新していくことにしている。約5000本の方程式でつくられているが、今年はトウモロコシ原料によるバイオエタノールの需給見通しを組み込んだ。
 予測の前提は08年の世界金融危機による経済低迷は一時的なもので、途上国の経済発展は高い水準で推移するというもの。
 この前提で試算すると、人口の増加(07年から10億人増で19年に76億人)、所得の向上、バイオ燃料の拡大などで農産物需要は拡大し、今後とも「穀物等の需給がひっ迫した状態が継続、食料価格は高い水準で、かつ、上昇傾向で推移する」との結果となった。
 
■生産、追いつくのか

 穀物の消費量は2019年までに5億トン増加して26億トンと予想。肉類消費が増えるため飼料用穀物消費量は26%増える。1995年から07年までの増加率16%と比べると高い伸びが見込まれる。
 この穀物消費量を確保するには単収の伸び、農地面積の増加が必要になるが、消費の増加に追いつかず、期末在庫率が07年の17%から13%にまで低下すると予測した。
 そのため価格は上昇傾向となり、07年とくらべて名目(物価上昇率を見込む場合)で31〜46%、実質(物価上昇影響を除外する場合)で6〜17%上昇する見込みだという。

■米国の輸出量は減少

 米国のトウモロコシ需給は、バイオエタノール原料の需要が増えて国内需要が増加、生産が追いつかないことから輸出量は減少すると見込んだ。世界全体としては、米国からの輸出量減は、ブラジル、アルゼンチンなどの輸出増で補われ07年のトウモロコシ純輸出量8200万トンが19年には9400万トンと試算されているが、米国のシェアは現在の64%から48%へと5割を切るとしている。

■中国は輸入増、ロシアは輸出増

 一方、世界最大の大豆輸入国となった中国では、さらに搾油用需要の増加で引き続き輸入量が増え、大豆の輸入シェアは5割を超すと予測。中国への輸出はブラジル、アルゼンチンがまかなうとしている。こうしたことから中南米地域は純輸入地域から純輸出地域への転換する見通し。
 穀物貿易では今後、ロシアの地位が高まりそうだ。小麦、大麦、ライ麦などの生産は大幅な生産増を予測、一方、食用や飼料用の国内消費量は増加が少ないことから輸出余力が増す。2019年にはロシアの純輸出量は小麦で現在のシェア14%が19%に増え、その他の穀物では同8%が28%へと20%も増えると予測している。

米国のトウモロコシと中国の大豆 需給見通し

(2010.02.10)