農政・農協ニュース

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「国内生産」の強化、あくまで市場主導で―OECDのプラマー開発課長

 OECD(経済協力開発機構)の農業・貿易担当のマイケル・プラマー開発課長が来日し3月1日、OECD東京センターで12年ぶりに開催された2月の「農業大臣会合」での議論を解説した。

 07年、08年の世界的な食料危機を受けて、今回の大臣会合では食料安全保障が大きなテーマとなった。
 採択された「大臣コミュニケ」には、食料安全保障の確保に向け「国内生産」、「国際貿易」、「備蓄」、「貧困に対するセーフティネット」などの総合的な対応が重要であることや、途上国への農業投資支援、気候変動への対応についても盛り込まれた。
 プラマー課長によると会合では途上国に対する「貿易のための援助」という新しい概念も議論されたという。「これによって食料不足、経済展望も改善できる」などと話し、そのためには「市場で十分に販売できる国際貿易体制が重要になる」として、私見としながらも「ドーハ開発ラウンド(現在のWTO農業交渉)は野心的な結論が求められる」と話した。
 一方、大臣コミュニケでは各国が「国内農業生産」を強化することの重要性も強調したが、これについては「市場主導と、補助金付きの政策主導の生産強化とでは大きな違いがある」と指摘。この議論の背景には、今回の議長国だったニュージーランドで1990年代に進んだ市場主義的改革の成果が強調されたという。
 議長を務めたカーター農相自身が農業者で「構造変化や混乱も起きたが、生産は伸び、補助金なしで農家の生活は安定した。古いやり方に戻りたい農家はいない」という考えが示されたことを披露、貿易も含めて自由化を前提にした国内生産の強化が食料安保につながるという議論だったことを強調した。
 こうした議論のなかでも、農業の多面的機能について各国から言及があったことが議長総括ペーパーに記されているが、「この会合で出てくることは予想されていなかった。ただし、コンセンサスはなかった。意見に非常に幅広い相違がある、ということについてのコンセンサスがあっただけ」などと述べた。

(2010.03.08)