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多収量イネの遺伝情報を解析 食料危機回避へ期待  名古屋大学

 名古屋大学生物機能開発利用研究センターの芦刈基行教授らの研究グループは、イネの収量を劇的に増やす遺伝子を明らかにし、機能を解析したと発表した。その遺伝子は、世界の農家の人々が幸せになるようにという願いを込めてWFP(Wealthy Farmer's Panicle)遺伝子と命名した。

多収量イネの遺伝情報を解析 イネは穂軸から数回枝分かれして花をつける。枝分かれのことを「枝梗(しこう)」と呼び、回数に応じて1次枝梗、2次枝梗とあるが、この枝梗数が多ければ着粒数も増え収量があがる。
 日本の一般的なイネ品種「日本晴」は1次枝梗数10本ほどで、穂1つあたり150粒ほど着粒するが、名古屋大学が実験用に保存しているイネ品種「ST-12」は1次枝梗数30本、着粒475粒と、それぞれ3倍ほどある。芦刈教授らの研究グループは2品種を遺伝的に解析し、1次枝梗数を制御するWFP遺伝子を発見した。
 同研究グループは05年、イネの着粒数を増やすGn1遺伝子も明らかにしているが、日本晴にGn1とWFPを同時に導入したところ、1次枝梗数11.6本が23.8本に、一株あたりの着粒数2232粒が3396粒と、それぞれ1.5倍に増えた。
 これら遺伝子は交配などで効率的にイネ品種に取り込めるので、遺伝子組み換えをしなくても新品種の育成ができる。
 また、この研究成果はイネだけでなくトウモロコシ、ムギなど他の穀物にも応用できるため、「近い将来、これらの遺伝子を活用した新品種を世界に分譲し、人類の食糧危機回避の一翼を担うことを期待している」(同研究グループ)としている。
 研究成果はイギリスの月刊科学誌『Nature Genetics』5月号に掲載されている。

(参考資料)
日本晴とST-12の比較

(2010.05.26)