農政・農協ニュース

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新たな直接支払いを提起―JAグループが政策提言を正式決定

 JA全中は6月3日の理事会で「協同組合の役割発揮による農業・農村の活性化に向けたJAグループの政策提言」を決めた。5月13日に「案」を提起し組織協議をするとともに、各政党や消費者団体、学識者などへの説明と意見交換などを行ったほか、全中のホームページを通じて263件の意見も寄せられた。これらをふまえて決定した。

◆3つの基本政策を

 JAグループは農業の活性化には3つの政策の枠組みが必要だと提言している。
 それは、
 (1)食料安全保障を含む農業・農村の多面的機能を評価した直接支払い制度(地目別にすべての農地に支払い=1階部分の支援策)
 (2)需給・価格の安定対策と、それに努力した生産者に対する経営所得安定対策などの品目政策((1)を下支えにした2階部分の支援策)
 (3)地域農業を支える担い手に対するセーフティネット政策(3階部分の支援策)、だ。
 (3)は地域ごとに多様な担い手を位置づけ、その育成支援とともに、担い手自らが拠出するなどの仕組みによるセーフティネット対策が必要だとしている。


◆戸別所得補償との違い

 今回、政策提言ではこうした基本的な考え方と戸別所得補償制度との関係を整理した。
 戸別所得補償制度は新基本計画で「販売価格と生産費の差額を国が直接交付する制度」と位置づけられている。品目は恒常的に販売価格と生産費が逆転しているものとされ、野菜・果樹は対象外となった。
 この制度の目的は自給率向上と農業の多面的機能の維持だ。交付は農地面積に応じて行う。こうした政策の目的と面積支払いという点ではJAグループの考え方と同じである。
 しかし、JAグループが提言した直接支払いは、販売価格と生産費の差額を支払うのではなく、食料安保、多面的機能の価値を算定して支払うべきだというもの。したがって、水田農業のみならず野菜、果樹などすべての農地を対象に実施する仕組みである。
 提言では戸別所得補償制度の本格実施にあたっては「所得補償的性格の対策よりも、国民全体に果たしている多面的機能の便益のうち、農産物価格に反映されない分を正当に評価し補てんするという考え方が必要だ」と強調した。


◆需給調整対策も提起

 そのうえで畜産・酪農、果樹・野菜など今後検討が予定されている品目も、新たな直接支払いを下支えとし、品目ごとの特性に応じた支援対策の充実・強化が必要だとした。
 とくに米のモデル事業で販売価格下落に対応する変動部分を措置したことについて、本格実施に向けては、こうした対策よりも、計画生産に努力した生産者の公平確保策や需給・価格安定を支援する対策のほうが重要だと指摘した。
 また、直接支払い制度では、農業の多面的機能に着目するだけでなく、農村の振興を目的とした「地域振興交付金(仮称)」も提起。医療活動、高齢者福祉活動、生活文化活動などに取り組む農業者や地域住民の活動を支える政策も提言に盛り込
んでいる。


◆6次産業化で所得増大

 新基本計画では、農産漁村の6次産業化を活性化策のひとつと位置づけて、農業などがより付加価値を生み出し、それを農山漁村サイドに帰属させるような取り組みを重視している。
 提言でも6次産業化による所得増大は必要としながらも、農業者個々の取り組みだけではなく、地域単位や県単位、JAや地域組織の協同の取り組み、農商工連携など他産業と連携した取り組みを支援することが必要であることを強調した。
 また、都市農業も重視。「都市農業振興・都市農地(緑地)保全法(仮称)」を制定する必要があることや、相続税については現行の「法定相続分課税方式」を堅持することも提起した。

(2010.06.04)