農政・農協ニュース

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「小さな協同」で「大きな協同」を活性化させる  協同組合セミナー in 広島

 広島県内のJA、漁協、生協、森組など11の協同組合や連合会で構成する広島県協同組合連絡協議会(HJC)と協同組合経営研究所は7月2日、広島市内で「2010年協同組合セミナー in 広島」を開いた。県内外から150人ほどの参加者があった。

 セミナーのテーマは「地域づくりと新たな協同組合運動の展開」。地域での福祉活動と起業した女性グループの活動などの事例報告をもとに、協同組合間協同や職員同士の協働などについて議論した。
 HJC会長の村上光雄JA広島県中会長は「地域コミュニティの崩壊は社会的問題となり、行き過ぎた市場原理主義の抑制が求められているなか、協同組合の理念や運動が注目されている。今年がレイドロー報告からちょうど30年目だが、現代社会の矛盾を克服する方向性を示唆したものであり、改めて見直したい」とあいさつし、今セミナーを新たな協同組合運動のために何をしなければならないかを考えるきっかけにしたいと述べた。


◆地域を協同で満たす

 基調講演は広島大学大学院の田中秀樹教授が「小さな協同からの地域づくり」をテーマに行った。
 農協や生協などの「大きな協同」と、助け合い福祉組織や集落営農法人などの「小さな協同」の違いを説明し、「1960年ごろにはわが村の農協だったものが、町、市、県域などと大規模化することで組合員が顧客化し協同が衰退した」と指摘した。
 協同組合の役割を「組織と事業を通じて、地域を協同で満たす地域づくりだ」とし、大きな協同の中に直売所や福祉組織などの小さな協同をたくさんつくったり、組合員と一緒に暮らしの中から事業化することなどで、「大きな協同の活性化をめざそう」とした。

発表者を含めた全体討議(左から)岡村氏、関口氏、梅木氏、山城氏、松岡氏(写真)発表者を含めた全体討議(左から)岡村氏、関口氏、梅木氏、山城氏、松岡氏

 

◆ワーカーズコレクティブ、女性起業で地域づくりを

 事例報告は、「ワーカーズコレクティブ(W.Co)がネットワークする地域の助け合い」関口明男氏(福祉クラブ生協専務理事)、「『農村女性起業』による郷土料理の継承と『食農』による多様な事業展開について」梅木麗子さん((株)早乙女たちの台所代表取締役)。
 福祉クラブ生協は1989年設立の福祉専門生協だ。W.Coは、地域の人たちがみんなで資金や労力を出し合って経営しモノやサービスをつくっていく、組合員同士が助け合い参加型で働く組織だ。
 非営利・協同の新しい自由な労働の形として注目されているが、関口氏は「従来の支配的雇用労働とは異なるので、生計を担うための稼ぎを前提とした雇用ではない。少なく消費して心豊かに暮らすという価値観だ」と、W.Coの理念について述べさらなる発展をめざしたいとした。
定員100人に対し150人ほどの参加者があった “早乙女たちの台所”は、広島県内で消えつつある郷土の葬祭弁当を伝承しようと、JA広島北部管内の女性部員など8人が2006年に起業した平均年齢70歳の会社である。伝統食や葬祭料理の仕出しのほか、地元産食材を使ったケチャップや豆腐などをつくり道の駅で常設販売したり、小学校で食農教育の出前授業などを行っている。
 JAの元女性部長である梅木さんは「農業者と消費者の関係があまりにも疎遠になっている。食を通して、消費者に農業への理解を深めてほしい」と、今後の抱負を語った。
 事例発表をした2人と、司会者にHJCの岡村信秀氏、コメンテーターに協同組合経営研究所の松岡公明氏、パネリストに中国新聞社の山城滋氏を加えて全体討議を行い、W.Coや女性起業が生協や農協に与える相乗効果、小さな協同の特徴、地域づくりなどについて議論があった。

(写真)
定員100人に対し150人ほどの参加者があった。

(2010.07.08)