農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

事故米、台帳偽装し食用に横流し  農水省が業者を告発

 輸入時にカビが見つかったために飼料用として処理することを条件に輸入したMA(ミニマム・アクセス)米を業者が台帳偽装し、食用に販売していたことが農水省の調査で判明した。7月22日、同省は調査結果、関係事業者の処分内容とあわせ食品衛生法違反などで警察に告発することを公表した。

◆3社が共謀して偽装

 この米は平成19年に輸入された米国産のMA米82t。
 輸入業者は豊田通商(株)(代表:高梨建司)で同年6月の輸入検疫でカビが発見されたため、同社は事故による損害品を扱っている神奈川県の甘糟損害貨物(株)(代表:清水計喜)に対して同じ神奈川県内の精麦業者、協和精麦(株)(代表:米山敬二)で飼料用に処理することを条件にこの事故米を販売。同社はこの処理方法を輸入時に農水省、厚労省に報告していた。
 ただし、今回の調査では最終的に飼料用に処理されたかどうかについて、同社は確認していなかったことが判明した。
 さらに豊田通商からこの事故米を仕入れた甘糟損害貨物は、実際には協和精麦に飼料用処理を委託せず、横浜市の事故損害品の仲介業者、石田物産(代表:石田好正(当時))に協和精麦での飼料用処理も含めて処理を任せるかたちで販売していたことが分かった。石田物産が実際に飼料用として処理したかどうか、甘糟損害貨物も確認しなかった。
 石田物産はこの事故米を仕入れ、愛知県半田市の米麦仲介業者の共伸商事(代表:渡邉輝雄)に販売すると同時に、協和精麦に対しては飼料用処理をしたように加工台帳等を偽装するように依頼、協和精麦もこれに応じた。
 共伸商事は、飼料用であることを知りながらこれを仕入れ、飼料用と示さずに他社に販売した。調査で農水省は石田物産、協和精麦、共伸商事の3社が共謀したとみている。

◆加工用米調査で発覚

 今回問題となった事故米については平成20年の三笠フーズ等による食用横流し事件をきっかけに、同年11月に一度調査されている。その際は、加工台帳にあるとおり協和精麦が飼料用として処理したものと判断された。
 それが虚偽報告だった事実が発覚したきっかけは、国産加工用米が事業計画どおりに生産・流通しているかどうかを確認する農水省の定期検査だった。
 対象となった酒造業者への調査で、この業者が仕入れた原料用MA米10tの出所が飼料用として処理されたはずだった今回の事故米ではないかと疑われた。今年4月から立入調査をし3社が共謀して台帳等を偽装、食用に販売していたことが分かった。
 82tの事故米のうちこの10tを含め現在までに19tの流通状況が解明されているという。いずれも品質に問題がないことが確認されたうえで酒類の原料に使用された。残る63tについては調査中だ。また、この事故米にはカビ以外の問題は指摘されておらず、農水省による輸出国の船積み段階検査でも、基準値を超えるカドミウムやカビ毒(アフラトキシン)は検出されていない。
 農水省はこの不適正流通問題を受け、関係業者に対して同日付けで処分した。
 豊田通商(株):輸入米麦の政府買入入札等の指名停止(3か月)、協和精麦(株):輸入大麦の政府売渡の停止(9か月)、政府米麦の買受業者に対して同社に処理委託をしないよう措置(9か月)、甘糟損害貨物(株)、石田物産、共伸商事については、政府米麦の買受業者に対してこの3社へ販売しないよう措置(9か月)。

◆3000tにも偽装疑惑

 また、甘糟損害貨物(株)については食用への横流し販売のための偽装工作の意図はなかったものの、米穀販売について食糧法で定められた届出を行っていなかったことから食糧法違反の疑いがあるとして警察に告発する。その他の3社は食品衛生法違反の疑いで告発する。いずれも神奈川県警と調整中だ。
 豊田通商(株)については、飼料用として処理されたかどうかの最終確認については、輸入契約上の義務があるものの、故意の法令違反はないものとして告発は見送る。
 なお、告発される協和精麦については、ほかに飼料用として処理したとの報告が約3000t分あるという。平成19年以前のMA米とみられている。農水省はこれらの米についても流通経路を調査する。
 事故米問題をきっかけに20年11月以降、輸入時に食品衛生法違反となった米穀は、輸入業者が輸出国に返送するか廃棄されることになっており、いわゆる事故米が非食用として輸入されることはなくなった。また、今年4月の食糧法改正で非食用米穀は定められた用途に確実に処理すると確認できた事業者に直接販売しなければならなくなったため、今回明らかになったような転売はできなくなっている。

不適正流通の概要図

(2010.07.22)