農政・農協ニュース

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愛知「げんきの郷」で情報発信 アセアン農村ふれあいプラザ  JA全中

 アセアン各国の農業者グループがつくる特産品の展示を通じて、アジアの農村の生活・文化への理解を広め各国農業者の所得向上に寄与しようと東京・丸の内に2006年に開設された「ASEAN農村ふれあいプラザ」が、7月16日から19日の4日間、JAあいち知多の「JAあぐりタウン・げんきの郷」に移動して展示・販売を行った。
 同プラザがJAファーマーズマーケットなど地方に移動して情報発信するのは初めて。会場を訪れた地元の人からは、各国農業者グループの精巧な手作業に感嘆する声もあがるなど関心の高まりが感じられた。
 「日アセアンパートナーシップ強化事業」(注)に取り組むJA全中は「特産品を通じてアセアンに触れ感じてもらいたい。こうしたイベントを今後は各地で展開できれば」と話している。

◆体験コーナーも設置

JAあぐりタウン げんきの郷」の「めぐみの湯」入口で特産品を展示・販売 「ASEAN農村ふれあいプラザatげんきの郷」は、JAあいち知多管内の大府市にある「JAあぐりタウン・げんきの郷」が開業10周年リニューアルオープンを迎えるのを機に企画された。「げんきの郷」は農産物直売所のほかパン、総菜の加工販売、農業体験研修施設や温泉施設もある全国有数のJAファーマーズマーケット。取材に訪れた19日、午前中に駐車場はいっぱいになるほどの盛況ぶりだった。
 今回、「ASEAN農村ふれあいプラザ」は温泉施設・めぐみの湯の入口に開設された。
 展示・販売されたのはASEAN(東南アジア諸国連合)各国の農業者グループや農協が製作・販売する地域の特産品。
 竹製のバックやかご、木製のサンダルやおもちゃ、水牛の角でつくったサラダサーバーセット、椰子の実製の調味料入れ、マンゴー材のトレーなどなど、まさに東南アジアの農村を感じさせる特産品が並んだ。
2階のスペースにはタイの木製おもちゃの体験コーナーも。子どもから大人まで親しまれた なかでも人気があったのはタイ北部のチェンマイの農業者グループがつくっている木のおもちゃ。ルービックキューブのように形を整えるものや、ジグソーパズルのように絵を完成させるおもちゃなどが展示された。
 スタッフによると子どもだけでなく「お父さんがはまってしまって、家でやろうと買って帰った人もいました」とか。竹製のバックやパルプを使った帽子などは女性に人気で精巧な手づくり製品に驚いたり、「昔は日本の農村にもあったね」、「どれも温かみが感じられる」、「ずっとこのコーナーがあるといい」などの声も聞かれた。

(写真)
上:JAあぐりタウン げんきの郷」の「めぐみの湯」入口で特産品を展示・販売
下:2階のスペースにはタイの木製おもちゃの体験コーナーも。子どもから大人まで親しまれた

 

◆共感から協力へ

アセアンの特産品。丁寧で精巧な商品に感心する人も多かった ASEAN農村ふれあいプラザでは、来場者や特産品を購入した人に特産品のデザインや素材などについてのアンケートを実施し、それらをとりまとめて各国にフィードバックするなど、現地の人たちのマーケティングに役立つ支援も行っているが、今回の会場でもそれを実施した。
 また、スタッフによると東京・丸の内(東京国際フォーラム・ごはんミュージアム内)の同プラザで日頃聞かれるのとは、また違った感想があったという。 東京ではデザインや肌触り、珍しいアイテムに関心を寄せる声がもともと多いが、今回のげんきの郷ではそれらに加えて、素材の種類とそれを加工する技術を感心するなど「作る人」への共感が感じられたという。本紙の取材時も「これ、向こうの農協の人たちの仕事なんだね」としきりにうなずいて見入っている人もいるなど、地方での開催ならではの印象を受けた。
 「げんきの郷」では今回の開催について「訪れる人に、ここがさまざまな情報発信の場だと理解してもらえればいい。農業や農村の理解につながれば」(総務部の市野喜啓さん)と話す。
 会場では小規模農業者の所得向上や生活水準の向上をめざしてアジアの農業者を支援しているJAグループの取り組みもパネルで紹介した。
 「興味をもって見てくれる人が多かった。これをきっかけに各地のファーマーズマーケットなどと連携しアジアの農家の姿に触れる機会を各地につくっていきたい」とJA全中。JAでは独自にアジアとの共生運動を展開しているところも多い。そうしたJAの取り組みと合わせて共感と協力の輪が地域に広がることが期待される。

(写真)アセアンの特産品。丁寧で精巧な商品に感心する人も多かった

 

【アセアン(東南アジア諸国連合】
ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10か国。
【日アセアンパートナーシップ強化事業】
 日本とアセアン間、アセアン地域内における農業者の組織化や農民組織などの民間レベル、地域レベルでの協力・交流活動を促進する政府の事業。日本政府がEPAを推進するにあたって決定した基本方針「みどりのアジアEPA推進戦略」(04年)に盛り込まれた「EPAを通じたアジアの農山漁村地域の貧困等の解消」に基づくもの。
 JAグループはEPAについて「自由化と協力のバランス確保」が必要との観点から農村開発や農協間協力を通じて農業者の生活水準や所得向上をめざすべきと主張してきた。
 この事業でJA全中はアセアン事務局の委託を受けて「ASEAN農村ふれあいプラザ」での農村特産物の紹介や販売のほか、研修・専門家の派遣を通じた農業者の人材育成、ウェブサイトを活用した情報の共有を行い、アセアン農業者の人づくり、モノづくり、組織づくりを支援している。

(2010.08.03)