農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

国産バイオ燃料の利用拡大に向けて―グリーンガソリン1周年記念セミナーから

 JA全農は、昨年7月に新潟県でイネ由来のバイオエタノール混合ガソリン(愛称:グリーンガソリン)の販売を開始した。その1周年を記念して、7月9日に新潟で「国産バイオエネルギーの利用拡大に向けて」をテーマにセミナーを開催した。そのセミナーの基調講演として五十嵐泰夫東京大学大学院生命科学研究科教授が「バイオ燃料―世界の動向・日本の方向」と題して、今後、国内でバイオ燃料の利用を拡大するための基本的な考え方を講演されたので、その要旨を紹介する。

稲作を守る複合的・総合的
システムの確立を

東京大学大学院教授 五十嵐泰夫氏東京大学大学院教授 五十嵐泰夫


 五十嵐教授は、「今、なぜバイオマス・バイオ燃料か」について、まず、人類の持続的な存続のための「炭酸ガス排出削減・地球温暖化防止」と同時に、国家の持続的存続のための「エネルギー安全保障」をあげた。エネルギー安全保障は、「自国のエネルギー自給率向上」(日本のエネルギー自給率は原子力を除けば4%)と、日本の農業の場合は石油の輸入が止まれば、農業そのものの存続が危うくなる「農業のエネルギー自給率向上」の二つの側面があること。
 そしてバイオマスを利用することによる地域における雇用創出など「地域経済(農林業)の活性化」をあげた。
 世界のバイオエタノールの状況をみると、ブラジルは、主要な農産物であるサトウキビからエタノールを石油よりも安いコストで生産し、世界のエネルギーの総需要の5%、将来は20%を供給する計画で、国内でも例えばサンパウロ市ではE25ガソリンを使用することを国の施策として義務付けている。
 米国は余剰農産物処理としてコンスターチの30%をエタノールに振り向けるという農業政策と、中東へのエネルギー依存の権限という国家安全保障という観点から、エタノール生産を国として進めている。
国産バイオ燃料の利用拡大に向けて あるいはスウェーデンでは小麦をエタノールの原料にするなど、その国・地域の主要な農産物を原料として、ブラジルは例外だが、地産地消(国内生産・消費)が基本だと指摘した。
 そして、「食料とエネルギーの競合」といわれるが、食料を確保したうえで、その余剰分や残渣をエネルギーに使う「複合的・総合的バイオマス生産・利用システム」を確立することが重要であり、日本の場合には、最重要農産物である「イネ」を基本とし、「国家安全保障として稲作を守る」システムを確立することだとした。
 つまり「守るのは稲作」だから、食料用、飼料用、工業用、燃料用の「米」を別々に作るのではなく、作られた米の「出口」として「一部を食料にし、一部を飼料、燃料、化学品や肥料にして使う」という考え方が必要がなのではないかと問題提起した。
 そしてこれからのバイオ燃料に必要なこととして、地域の特性を活かし、地域を活性化する地産地消、未来から今をみて「将来の展望を示すこと」、若い人が魅力を感じるような「楽しさや遊び」心をもつ、稲なら米だけではなく稲ワラ使用などを含めた基盤技術の開発をあげた。

(2010.09.07)