農政・農協ニュース

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【特集・日本の明日を考える】シリーズ・2012年国際協同組合年に向けて 協同組合が創る社会を

 農業はもちろん、農産加工や高齢者福祉まで農村の生産と生活の日々の現場は女性の「協同」の力が大きく支えている。今回は女性の力と役割の視点で農業現場を精力的に取材している榊田みどりさんに提言してもらった。榊田さんは「農業者・非農業者の枠を超えた女性のリアルなニーズ」に応える生協などとの連携強化が新たな協同の創造と地域再生を実現すると強調している。

農業ジャーナリスト・榊田みどり

女性のニーズと能力を活かそう
「新たな協同の創造」とは?


 JAグループは、2009年10月の第25回JA全国大会で、「大転換期における新たな協同の創造」を決議した。農産物の供給だけでなく、高齢者福祉や子育て支援などの地域課題の解決のためには、「地域で仕事をし、そこで暮らす人々の相互扶助の精神に基づく新たな協同が不可欠である」とも述べている。

 

◆JAは地域のため「仕事」をしてきたか?

 

農業ジャーナリスト・榊田みどり氏 しかし、荒っぽい言い方になることを敢えて承知で書かせていただけば、近年のJAが、本当に「地域で仕事をし」てきたのか、「そこで暮らす人々の相互扶助の精神に基づく」活動を展開してきたのか、改めて足元を見つめ直すことが、第一に必要ではないかと感じている。
 農家が大半を占め、地域住民が均質だったかつての農村とはちがい、今は消費者だけでなく農業者も、自給・兼業・専業・定年専業と実に多様化し、農業に対する姿勢もちがう。信用事業では、非農家を含めた準組合員の確保を積極的に進めてきたJAも多いが、ことJA組織の運営という点では、この地域の多様性への対応が不十分なままではないかと強く感じている。
 JAは、農業協同組合である。協同組合には、事業性と運動性の両立が求められる。信用事業での非農家取り込みが、事業性の面では大きなメリットを生んできたのはまちがいない。しかし、はたして、協同組合としての運動性という視点から、非農家を含めた「地域に立脚した仕事」を、今の全JA、単協がしているとは、控えめに見ても思えない。
 1年の3分の1以上は地方を歩き、農業者と話す機会の多い筆者の耳には、専業農業経営者から「JAは、すでに農業者のための協同組合ではない」という批判が聞こえ、一方の兼業の農業者からも、「JAは地域から離れてしまった」という批判が聞こえてくる。もちろん、地域差はあり、単なる愚痴として聞き流していい批判もあるが、根底には、運動性という側面で、JAが今も均質性を求める体質を抜け出せず、地域住民の多様性に対応できていないことに大きな要因があるのではないかと感じている・・・。


(続きはシリーズ 第9回 「女性のニーズと能力を活かそう 「新たな協同の創造」とは?」で)

 

(第1回 「協同組合セクターの連携強化を」加藤好一・生活クラブ生協連会長
(第2回 「協同組合への理解を広める」冨士重夫(JA全中専務)・田代洋一(大妻女子大学教授)対談
(第3回 「『浜』がJF―漁協―の原点」JF全漁連専務理事・山本忠夫氏
(第4回 「独禁法適用除外の解除論―『国連宣言』と逆行」加藤一郎・JA全農専務理事
(第5回 「組合員は組織の先端―『農協は今、組合員から力を吸い上げているのか』石田正人・長野県飯山市市長(元JA北信州みゆき組合長))
(第6回 「いまJAが果たす役割は」廣瀬竹造(前JA全中副会長)・土屋博(JA全中常務理事)対談
(第7回 「社会の危機救う「他者への思い」―世界の食料問題と国際協同組合年―生源寺眞一・生協総合研究所理事長
(第8回 「格差拡大の中での『成長』には意味がない」神野直彦氏(東京大学名誉教授)・村田武氏(愛媛大学社会連携推進機構教授)対談

(2010.09.14)