農政・農協ニュース

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米の出口対策確立を」求める  JAグループ

戸別所得補償制度の本格実施で政策提起

 JA全中は9月の理事会で戸別所得補償制度の本格実施に向けたJAグループの考え方を決めた。わが国農業のあるべき姿を実現するための総合的な政策体系の確立と、米政策では出口対策を含めた需給・価格の安定策が必要だと強調している。

◆米価下落防ぐ対策を

 JAグループは今後の農業政策には(1)農業・農村の多面的機能の評価を基本とした直接支払い制度の確立、(2)需給・価格の安定対策を基本とした品目対策の確立、(3)地域農業を支える担い手に対するセーフティネット対策の確立、の3点が必要だと主張してきた。
 今回は23年度予算概算要求で戸別所得補償制度の本格実施に向けた骨子が示されたことから、改めて具体的な提案をまとめたもの。
 提案の基本は、来年度からの農業政策は「野菜・果樹も含め」水田や畑作農業のあるべき姿と地域農業の将来像を描いたうえで、その実現をめざす総合対策を体系的に明らかにすること、とした。
 また、すべての農地に対する多面的機能評価に基づく直接支払い制度を確立すること、これをWTO(世界貿易機関)協定の「緑の政策」(削減対象外)に位置づけることが必要だとしている。
 米については、戸別所得補償制度で価格下落を補てんする仕組みがあるが、JAグループは22年産米の需給と価格環境を整備することと、今後は米価下落を招かないよう「計画生産の徹底」と「出口対策の構築」を含めた需給・価格安定対策を確立するよう求めている。

◆地域の創意工夫、反映を

 また、米の価格下落を補う交付金(米価変動補てん金)は、全国平均価格に基づいて算出するとしているが、各地域・銘柄の価格下落幅との差額分が取引価格の引き下げにつながるなどの弊害があると指摘、担い手を対象にした地域・品目ごとに価格や収入の変動に対するセーフティネット策が必要であるとしている。
 また、農水省は畑作物でも収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)を廃止するとしているが、麦・大豆など国際相場の変動にともなって国内価格も大きく変動することも考えられるため、担い手を対象にしたセーフティネット策も必要と提起した。

◆食糧法の改正が必要

 モデル対策で実施されている飼料用米、米粉米などの新規需要米や水田転作の麦、大豆などへの交付金(水田活用交付金)は、生産者に対して米の計画生産への参加を条件としていない。
 しかし、JAグループでは米の需給調整の実効性を高めると同時に、地域での計画的、集団的な転作への取り組みを進めるためには、米の計画生産とリンクした仕組みが必要だとした。
 また、23年度概算要求で430億円を要求した地域で助成を上乗せできるなどの「産地資金」については、転作拡大や地域振興作物など作付けが拡大しても助成単価が下がることがないよう転作拡大に応じて支援する仕組みとすることや、十分な予算確保を求めた。
同時に畑作でも「産地資金」が活用できるような予算確保が必要だとしている。
 そのほか担い手への農地集積を促進する交付金制度の実施も求めた。
 戸別所得補償制度の本格実施にあたって、農水省は米の生産目標数量の設定や配分などは国・行政の「主体性を発揮する」方向だ。
 そのためJAグループは、米の生産調整は国・行政が実施主体であり、目標配分と生産調整達成に責任を持つことを「国・行政が主体となる需給システム」とすべきとの考え。これを食糧法などに盛り込む必要があるとして、同法と関係規定の改正も必要だと強調している。

(2010.09.17)