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TPP、「情報収集のための協議」を提言―民主党PT

 政府が11月9日にも決めるEPA(経済連携協定)の基本方針に向けて民主党内の意見を集約してきた「APEC・EPA・FTA対応検討PT(プロジェクトチーム)」(山口壮座長)は4日、「経済連携推進についての提言」をまとめ同日夜、玄葉光一郎国家戦略担当大臣に提出した。
 TPP(環太平洋経済連携協定)については「情報収集のための協議を行い、参加・不参加を判断する」とした。玄葉大臣は「(党の)思いを受けとめて対応していきたい」と述べた。

 提言ではTPPについては「農林水産業への影響にとどまらず『非関税分野』にも多大な影響がおよび『国のかたち』が変わることにも繋がりかねないため、慎重な対応が求められる」とした。
 そのうえでTPPの段階的手続きについて(1)情報収集のための協議を行い、参加・不参加を判断する、(2)参加条件を詰める本格交渉、(3)国会による批准、とした。
 焦点になっていたのは(1)で、当初案では「事前協議」とされていた。これに「TPPを慎重に考える会」(会長:山田正彦前農水大臣)など慎重派は、参加を前提にするものだ、と反対し、最終的には単に「協議」とすることで合意した。
 提言では、この段階的手続きについて、「(1)で把握した事実関係を基に、(1)と(2)の間において、徹底的な検証と国民的議論を行うことを前提とする」ことが盛り込まれた。情報収集した結果をふまえ、国民的議論をするというものだ。
 山口座長は、この提言について「(情報収集したあと)一度、参加、不参加の判断をするということ」と参加を前提にして協議をするものではないことを強調した。
 山田前農水大臣はこのとりまとめについて「『検討』の範囲内で収まった。そういう意味では私どもの意に添うものと考えている」と評価したうえで、「これからが非常に大事な問題。国のかたちが変わっていく問題だから、しっかり党内論議も、国民を交えた論議も当然必要になってくる。政府は必ず今日の党のPTの決定に沿ってくれると確信している」などと語った。
 山口座長によると党内議論の経過を3日に菅総理に報告した際、基本方針の考え方について、総理は「農業の再生と強化」を第一とし、次に2国間で交渉するEPA(経済連携協定)方針を明確にするという順序で意見をまとめてほしい、との意向が示されたという。
 提言はそれを受け「経済連携の推進を考えるに際しては、何よりも先ず、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農林水産業・農山漁村の振興等を損なうことのないよう十分配慮し、経済連携の推進と農林水産業の再生・強化とを両立させることとする」と明記した。
 また、農政については総理を本部長とする「国内改革本部(仮称)」を設置し、「農業予算の大幅拡大」や農業の輸出産業化を図ることなどを盛り込んでいる。
 ただし、EPAについては日豪EPAの合意に向け取り組みを加速させることや、「米国等、まだEPA交渉に入っていない国・地域との二国間EPAを積極的に推進する」ことなども最終段階で付け加えられた。
 米国との交渉は昨年のマニフェストのようにFTA(自由貿易協定)との表現は避けられているが、具体的な国名を挙げてさらなる貿易促進を示したことや、その一方でTPPについての「情報収集のための協議」としたことの整合性をどう図るのかなど、今後の方針が注視される。
【民主党の2009年マニフェスト】
○米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易・投資の自由化を進める。その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。

(2010.11.05)