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初動対応の遅れが要因、防疫体制の法整備を  口蹄疫対策検証委員会が報告書

 今春、宮崎県で猛威を振るった口蹄疫について、その措置と今後の防疫対策のあり方などを検討していた口蹄疫対策検証委員会は11月24日、報告書を取りまとめて篠原孝農林水産副大臣に提出した。篠原副大臣は謝辞を述べるとともに、この報告書を基に次回の通常国会で家畜伝染病予防(家伝法)法改正案を提出する考えを示した。

◆ワクチン接種のタイミングは遅かった

報告書を手渡す山根座長(左)と篠原副大臣 報告書では、感染が拡大した要因について「防疫体制が十分に機能しなかった」ことと「異常家畜の発見の見逃しや通報の遅れ」などがあったためだとした。
 また、牛よりも感染力が100倍以上も強い豚への感染によって被害が広がったことから、第一例目の発見があった4月20日から約1カ月後の5月19日に殺処分を前提とするワクチン接種を行ったのは「結果的に決定のタイミングは遅かった」と明記された。
 委員会座長の山根義久氏(日本獣医師会会長)は、これらの要因について鳥インフルエンザを例に出し「口蹄疫はヒトに感染するおそれがないためか、対応への緊張感や危機管理体制、国、地方自治体、生産現場での意思疎通がまったくできていないことに驚愕した」と述べ、早期発見・通報などの初動対応が的確に実施されるよう法整備すべきだと指摘した。また、これまで家伝法に記載されなかった「生産者の責任」についても、何らかのペナルティを課すべきだとした。
 今後の防疫措置のあり方については、▽全国一斉または都道府県ごとの定期的な防疫演習の実施、▽殺処分について日ごろからの埋却地の事前確保と作業マニュアルなどの作成、▽経済的補償も含めた予防的殺処分の法整備、などを盛り込み、「都道府県は早期通報や的確な初動防疫に万全を期すこと」、「生産者は衛生管理を適切に実施すること」が大事だとした。

◆感染ルートは不明、危機管理の徹底を指摘

 同日は口蹄疫ウィルスの感染ルートや伝播経路などを調査していた疫学調査チームの中間とりまとめも提出された。
 ウィルスの侵入については、「アジア地域の口蹄疫発生国から人・物を介して侵入した」と想定されるが、詳しいルートについては不明だった。感染の拡大については、人・物・車や堆肥などを介して広がった可能性がある、とした。
 また、最も初めに感染したのは、一例目が報告された4月20日よりも1カ月ほど早い3月26日(報告では6例目)だったと推定。4月20日の時点ではすでに10農場以上にウィルスが侵入しており、それらの確認が遅れたため感染が拡大したとしている。
 調査チーム長の津田知幸氏(農研機構動物衛生研究所企画管理部長)は、「バイオセキュリティが高いとされている農場、試験場などでも消毒が不十分だった。不特定多数の人や物の出入りがあるが、記録や危機管理に十分な配慮が必要だ」と指摘した。

(写真)
報告書を手渡す山根座長(左)と篠原副大臣

(2010.11.26)