農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

「価格政策より所得補償の強化を」筒井副大臣  食・農・環フォーラムが討論会

 食料・農林漁業・環境フォーラムは11月26日、「これからの米政策〜戸別所得補償と需給問題〜」をテーマに今年度のシンポジウム・討論会を開いた。筒井信隆農林水産副大臣は講演で、「所得補償政策の根拠は多面的機能だ」とコメ政策を中心とした民主党農政の基本的な考え方を述べた。討論会ではコメ主産地の生産者・JA職員も加わり、現場の苦境も交えて戸別所得補償制度やその財源などへの疑問や提案が出された。

パネルディスカッションの参加者。(左から)石川氏、忠氏、大和氏、筒井副大臣。(写真)
パネルディスカッションの参加者。(左から)石川氏、忠氏、大和氏、筒井副大臣。

 今年9月のコメの販売価格は60kgあたり1万3040円で前年同月比▲14%と、過去20年で最安値を記録した。生産現場では、今後の経営に対する不安や危機感が高まっている。
 討論会は、苦境に立たされている現場の生産者・JA職員と現職の農林水産副大臣が直接討論するということで、100人以上の聴衆が集まった。
 パネルディスカッションでは講演した筒井副大臣とともに(講演内容は別掲)、大和章利氏(岩手県・鳥喰生産協業組合長)、忠聡氏(新潟県・神林カントリー農園代表取締役)、石川薫氏(島根県・JA斐川町営農部長)の3人が登壇した。


◆補てん金では減収分を補えない

 東北地方ではほとんどの県で22年産米の概算金が昨年比で3000円以上減り、戸別所得補償モデル事業の固定払い・変動払い金をあわせても赤字経営だという。
 大和氏の集落営農組織では、10aあたり損益分配金が昨年に比べて1万円以上減った。「所得補償というからには、最低でも21年度の所得は確保されると期待したが、それどころではなかった」と生産現場の落胆を述べ、「今年のように落差の激しい年は、水田利活用自給力向上事業にあった激変緩和措置が必要だ。『米産地資金』というような名称で、地域・等級間の差に対応できる仕組みを考えてほしい」と提案した。
 忠氏の農園でも、収量減・品質低下・価格下落のトリプルパンチによる減収に対して補てん金では足りないという。筒井副大臣に「なぜ来年から実施される畑作では家族労働費の10割を見込んで、水田では8割なのか」と質問し、副大臣は「(水田の方が)対象者が多いので、財源的に仕方ない。財源に余裕があれば水田でも10割を計上したいのが本音だ」と答えた。


◆なぜ、畑作は10割で水田は8割なのか

 石川氏は、これまで民主党農相が「(戸別所得補償制度によって)需給が引き締まるので、価格対策はしない」と繰り返し主張してきたにも拘らず、結果的に米価が下落していることから、「国として生産調整未達成への厳格な対応が必要だ」と要望し、ある程度の価格政策を講じるべきだと意見を述べた。筒井副大臣は「価格政策を全面的に否定しているわけではない。来年度からの棚上げ備蓄は価格維持の面でプラスに働くだろう。財源的にも、今年は成果が見えにくかったが、価格政策より所得政策の方が低く抑えられる」と展望を述べた。
 会場からの質問で、食料自給率向上がまったく国民的運動に発展していない、との指摘を受け、筒井副大臣は「国民に農業の多面的機能と食料安全保障を最大限に周知し、理解を得ていく」との方向性を示した。TPPについても意見を求められたが、4人ともが徹底した議論の必要性を訴えた。


【筒井信隆副大臣 講演概要】
筒井信隆副大臣
所得補償の根拠は多面的機能

 所得補償政策の根拠は、第1次産業の持つ多面的機能にある。その経済効果は、農業で100兆円、林業で70兆円、水産業で8兆円と言われるが、その従事者は産物の対価を得ていても、多面的機能の対価は一銭ももらっていない。これを正当に評価しようというのが、基本的な考えだ。生産費と販売額の差額を補償するという形が、かなり実態に近い評価額になるだろうが、もしそれよりもいい計算方法があればよりよく変えていきたい。今年度はモデル事業なので予算措置だったが、来年度からはしっかり法制化しなくてはいけない。

主食米よりも新規需要米の手取りを増やす

 政府のコメ買い上げは、生産調整未達成者にペナルティを課さない代わりに、制度の参加者に価格差を補償し非参加者にはリスクを負ってもらうという当初からの戸別所得補償制度の考え方と矛盾する。そもそも、今年度は過剰作付面積が減り、生産調整への参加者は増えているので、戸別所得補償制度が米価下落の原因だとは言えない。需要減退、デフレ基調、一昨年からの在庫積み残し、などが米価下落の要因だ。すでに下落要因は出尽くしており、これ以上下がる心配はないだろう。
 転作の助成金を、新規需要米8万円、麦大豆3万5000円としたのは、やはり多面的機能などの面から見ても原則的には水田でコメをつくってほしいという狙いがある。なにより主食用米より新規需要米の方が手取りが大きいというのが重要だ。それを3年ほど続けて定着すれば、仮に生産調整を廃止しても主食用米の過剰作付けは増えなくなる。新規需要米の課題は、農家が販売先を自分で見つけなくてはいけないことだが、これは農水省の役割だろう。各地の農政局などに生産者のもとへ出向いて実需者とのマッチングを積極的に図るようにしたい。

日本の農産物には国際競争力がある

 農林漁業の6次産業化法案は、消費者が支払う金額の2〜3割と言われる第1次産業従事者の手取りを、地域資源を活用した農山漁村での事業興しを支援することで、4〜6割に高めるのが目的だ。
 アジア地域への輸出も大きな課題の1つだ。例えば中国では今、農地がどんどん工業地に変わり、就農者は1000万人規模で減り続けている。政府は食料輸入国への転換を明言し、諸外国へ食料の安定供給機能を求めており、日本はその重要な位置にある。中国で日本の農畜産物は「おいしくて安全」だと大変な人気がある。日本の農産物は価格面での国際競争力は弱いかもしれないが、安全性や食味の面では強い競争力があるのだから、それを活かすような政策を講じていきたい。

(2010.11.29)