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初めて事業協同組合を選定 FRONT80助成先6件を決定  農林中金

 農林中央金庫は3月3日、「公益信託 農林中金80周年森林再生基金」(FRONT80)の第6回助成先を決めた。

 同事業は、平成17年に同庫創立80周年を記念して始めたもの。民有林を再生する事業・活動に対して1年あたり1億円ほどを助成し、10年間実施する予定。これまで5カ年で22事業体に総額4億2100万円を助成しており、助成先には森林生態学、森林施業、森林情報管理などの専門家を派遣し事業完成に向けた「フォローアップ事業」も行っている。
 6年目となる今回は、森林組合・同連合会19件、NPO法人など5件の計24件の応募があり、公益性・創造性などの審査基準から6事業、計1億1600万円の助成を決めた。奈良県の吉野林業協同組合は、事業協同組合として初めて選定された。

 助成先に決まった事業体とその取り組みは次の通り。(【事業体名】(県名・対象地面積)「事業名」の順)

【北信州森林組合】(長野・388ha)
「デジタル森林管理〜森林経営の再生を目指して〜」
 リゾート開発・構想の撤退で整備が放棄された荒廃森林や境界不明の集落林が多い。ごみの不法投棄など、新たな問題も発生している。放棄された森林の管理のため、調査データをGISでデジタル管理し、森林整備(ハード)事業に結びつけ、地域森林の持続的利用モデルの構築をめざす。


【NPO法人杣の杜 学舎】(岐阜・20ha)
「美濃市ふくべの森入会林野再生モデル事業」
 皆伐を回避するため地域住民が立木を買い取ったが、森林管理の知識や技術を持つ人材が減っていた。すでに切り捨て間伐などを行っているが、地域住民とともに森林整備のモデル林を設置し、地域住民による共有林管理体制の再構築をめざす。


【中勢森林組合】(三重・158ha)
「森林ゾーニングによる多様で健全な森林づくり事業」
 全国的にも珍しく、谷から尾根にかけた狭い帯状の地域で境界明確化に多大な費用と労力がかかるため、森林が整備されずに放置され多面的機能が失われつつある。オオサンショウウオなどの貴重動植物の保全に配慮した森林ゾーニングや高性能林業機械の活用など、各段階の低コスト化を検証している。


【吉野林業協同組合】(奈良・100ha)
「川上村下多古峰の平 作業道作成工事及び周辺間伐事業」
 これまで優良材の生産地で高コストのヘリ集材が可能だったため、路網整備への関心が低く整備が遅れていた。「壊れない作業道づくり」の技術を共有し、現場までの通勤時間を含めた労働強度の軽減、利用間伐などの低コスト化、森林整備などを行い地域経済の発展と若い林業労働者の確保をめざす。


【熊本県森林組合連合会】(熊本・178ha)
「熊本市西部域民有林の森林境界明確化と荒廃森林の保全対策」
 森林組合が解散して補助制度の活用も行われず、森林所有面積も大半が0.3ha以下と極めて零細なので手入れ不足による荒廃森林の割合が高い。連合会が自ら集約化を行い森林整備を推進し、連合会の本来的役目である森林組合への指導機能の強化を図る。


【曽於地区森林組合】 (鹿児島・81ha)
「ふるさとの森再生事業〜台風被害からの復活〜」
 台風被害を受けやすい地域で、いまだに平成5年の台風被害の後遺症で一般用材の割合が低く、材価が安いため森林所有者の森林離れが進んでいる。私有林と公有林とを一体で集約化することで、森林所有者の意識を高め、台風に強いふるさとの森の再生を図る。

(2011.03.08)