農政・農協ニュース

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目に見えるかたちで施策を展開 JA全農23年度事業計画を決定

 JA全農は3月25日に臨時総代会(書面)を開催し、平成23年度事業計画などを決定した。また「TPP交渉参加断固阻止に向けた特別決議」を採択した。

◆直販事業や加工・業務用を拡大

 平成23年度は、22年度からの2年度目にあたるため、全事業の共通目標は「国産農畜産物の販売力強化」となるが、今年度はTAC活動とJA・全農グループ販売部門・直販施設などを結びつけ、地域の農産物・加工品の新たな販売チャネルの創出による事業拡大をめざす。
 園芸分野では、重点卸売市場との連携強化と合わせ直販事業を拡大していく。とりわけ契約栽培やリレー出荷体制の拡充によって、加工・業務用野菜への対応力を強化する。
 具体的には青果物の直販事業分量を2900億円(22年度見込み)から3000億円に、青果物加工・業務向け取扱いを同290億円から320億円に拡大することにしている。
 また、台湾・香港などアジアを中心とした現地量販店での常設売場の設置促進をし、国産農畜産物の輸出拡大にも取り組んでいく。

◆生産性向上技術の提供や購買品シェア拡大

 そして「国産農畜産物の販売力強化」という共通目標を支える事業上の最重点施策として「生産基盤の維持・拡大に向けた生産コストの低減」と「購買品目の取扱強化によるシェア拡大」がある。
 「生産コスト低減」として、耕種部門では低コスト資材の普及拡大、現場の生産性向上に寄与する新品種・新技術の普及に取り組む。
 畜産分野では、機能性飼料の開発や優良素畜・ET受精卵の供給を促進し、推進担当者と連携して生産者に対する高度な技術対応を行うサポート体制を強化し、生産性向上に取り組んでいく。
 「購買品のシェア拡大」では、海外原料の安定確保と有利購買、新資材の開発・普及、生活関連事業でのホームエネルギー機器の最適な組合せを提案する事業の展開、Aコープ店舗などでの国産農畜産物の取扱拡大などに取り組んでいく。
 また、ホームセンター(HC)など生産資材販売業者との競合について、全農では従来からHC商品の価格・品質調査を実施しているが、それによれば、肥料では全農の品質基準に満たない商品が多く、保証成分切れのものもあるという。
 農薬価格については、品目や地域ごとのばらつきがあるが、「総じてみれば約8割の品目でHCに負けない価格対応が可能な状況」にあるという。
 しかし一部では「目玉商品」として数量限定をしたり、極端に粗利益率を圧縮するなどして安値で販売し問題となっている地域もあるので、JAと連携し競合する品目についての仕入機能の強化や、市況に左右されない系統独自品目の共同開発などに取り組んでいくことも報告された。

◆米穀の落ち込み大きいがほぼ前年並み確保

 23年度の事業別取扱計画は
米穀事業6362億円(22年度計画8216億円)
園芸農産事業1兆2041億円(同1兆2115億円)
畜産事業1兆1007億円(同1兆611億円)
営農・生産資材事業8318億円(同8617億円)
生活関連事業9702億円(同9373億円)
合計 4兆7431億円(同4兆89932億円)
で、合計で22年度計画対比97%となっている。米穀事業以外は、22年度計画に対して+4ポイント〜▲3ポイントと、ほぼ前年並みの計画となっているが、米穀事業は計画比で約2000億円、22年度の実績見込み7300億円にたいしても約1000億円落ち込んでいるが、これは「単価」が安くなっているからだという。
 また収支計画によれば、23年度の当期利益は70億円(22年度計画は40億円)を見込んでいる。
 なおこの事業計画は、3月11日に発生した東北関東大震災前に立案されたものであり、この大震災の影響は勘案されていない。
 この大震災に対しては、これまで積立ててきた災害特別積立金約50億円あてて、被害対策や復興支援を行っていくことも決定した。

◆TPP断固阻止を決議

 総代会では、「TPPに参加することは、アメリカやオーストラリアから、関税のかからない農畜産物が自由に輸入されることを意味し、我が国農業を急速に崩壊させ、国民の命の糧を外国に完全に委ねてしまうと言っても過言ではない」。さらに食品加工産業も大きな影響を受け「生産拠点の海外移転など国内雇用の縮小も見込まれる」ことから、「TPP交渉参加断固阻止に向けた特別決議」を採択した。
 さらにこの特別決議では「今政府が行うべきことは、再び世界的な食料価格高騰が危惧される中で、農業所得を増大させ、食料自給率50%への政策的工程表を示し、農業者、消費者・国民が農業生産・食料供給に安心できるようにすることである」ことも指摘している。

(2011.03.28)