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放射性物資の暫定規制値を評価 食品安全委員会が緊急とりまとめ

 食品安全委員会は3月29日、「放射性物質に関する緊急とりまとめ」を行い厚生労働省に提出した。

◆安全評価は今後に

 福島第一原発事故によって放射性物質が放出されたことを受け、厚労省は食品の安全を守る観点から、3月17日に食品中の放射性物質に関する指標値を表のように暫定規制値として決めた。
nous1103310701.jpg この暫定規制値を超える放射性ヨウ素などが福島・群馬・栃木・茨城の4県のホウレンソウなどから検出されたことで、3月21日から出荷制限をされている。福島県ではさらに品目数が増やされた。
 この暫定規制値とは、原子力安全委員会が示した指標に基づいて緊急に採用したもの。原子力安全委員会の指標とは、放射性物質の管理基準として定めたものであるため、食品の安全性を評価したものではないことから、厚労省が3月20日に食品安全委員会に評価を依頼した。
 その後、約1週間で国際放射線防護委員会(ICRP)や世界保健機関などからの情報、研究成果をもとに、緊急とりまとめを行ったが、食品安全委員会は「今回はすでに定められている暫定規制値の妥当性について検討したものではない」と強調、緊急時対応としてまとめた文書だとしている。

◆分かりにくい結論

 緊急とりまとめでは基本的考え方として、「食品中の放射性物質は本来可能な限り低減されるべきもの」であると指摘し、とくに妊産婦や、妊娠している可能性のある女性、乳児・幼児については「十分に留意されるべきものである」としている。
 そのうえで放射性ヨウ素については、暫定基準値の根拠となっている「年間50ミリシーベルト」という甲状腺への健康影響を示す等価線量による規制について、「不適当といえる根拠も現在までに見いだせていない」と指摘。この規制について「食品由来の放射線曝露を防ぐうえで相当な安全性を見込んだもの」と結論づけた(等価線量50ミリシーベルトは、全身の健康影響評価をする実効線量では年間2ミリシーベルトになる)。
 一方、放射性セシウムについてはヒトは自然界から年間平均2.4ミリシーベルトの放射線を受けていること世界には、年間10〜20ミリシーベルトの放射線を受けている地域があるインドや中国など高自然放射線地域の住民でガンの罹患率や死亡率が増加したとは認められていないこと、などを挙げた。それらに基づき緊急とりまとめでは、国際放射線防護委員会が管理(介入)すべき指標値としている年間10ミリシーベルトについて「緊急時にこれに基づきリスク管理を行うことが不適切とまでいえる根拠も見いだせていない」とした。

◆暫定規制値を容認?

 しかし、一方で、現在の暫定規制値の根拠となっている年間5ミリシーベルトという規制について「食品由来の放射線曝露を防ぐうえでかなり安全側に立ったものである」とした。
 暫定規制値で放射性セシウムは野菜・穀類などで1kgあたり500ベクレル、飲料水・牛乳などで同200ベクレルとされているのは、年間5ミリシーベルトで管理することが根拠になっている。かりにこれが10ミリシーベルトでも適切だとなれば、規制値が緩和されることも考えられる。
 前述のように緊急とりまとめでは、この点について両論併記のように読める。ただし、記者会見で食品安全委員会事務局は、放射性セシウムについては年間5ミリシーベルトが「より安全側に立ったもの。最終的な結論。10ミリシーベルトを容認した、という言葉はあてはまらない」と強調した。
 また、リスク評価をする食品安全委員会は「食品に対する介入(管理)レベルを示したわけではない」ことを繰り返し指摘し、規制値についてはリスク管理をする厚労省が「独自の政策的判断を加えて決めるべき」(小泉直子委員長)としている。

(2011.03.31)