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参加断固阻止運動、新たな取り組みを検討  1千万人署名 4月末に仮集約  JAグループ

 3月11日に発生した東日本大震災以降、TPPに関する国内の議論は事実上、停止している。菅総理は3月29日、参院予算委員会でTPP参加の是非を判断することについて「状況の方向性が見えたなかで、改めて検討することが必要」と答弁。6月がめどとしていた判断時期をそれ以降にずれ込む可能性を示した。
 こうしたことから4月7日のJA全中理事会では、6月までを運動期間として取り組んできた取り組みを一旦整理し、情勢を注視しながら改めて運動を提起するなど、当面の対応方針を決めた。

◆政府・交渉の動向

 東日本大震災の発生でTPP参加について政府が国民に説明する場として予定していた「開国フォーラム」は埼玉、石川などで開催されたが、以降の6回がすべて中止された。 3月29日には菅総理がTPP交渉参加の是非についての判断時期が6月以降にずれ込むことを示唆した。
 また、3月27日から4月1日にかけてシンガポールで第6回TPP拡大交渉会合が開かれたが、JA全中のまとめによると、この会合終了後、米国通商代表部のワイゼル代表補は「いくつかの非常に敏感な問題では合意に至っておらず時間がかかる」と語り、交渉が難航していることを示唆、11月のAPEC首脳会議までの妥結についても「早期にと思っているが、今後の進展次第」と述べたという。
 一方、政府の議論が事実上停止するなか、国会は3月23日の衆院農林水産委員会で「平成23年度畜産物価格等に関する決議」を全会一致で採択。そこではTPP、EPA(経済連携協定)、WTO(世界貿易機関)交渉の検討にあたっては、米、乳製品など重要品目を交渉から除外するよう求めた平成18年の
同委員会決議の趣旨をいふまえるべきとの内容を盛り込んだ。これは重要品目に対する適切な国境措置の確保が必要だとするもので、与野党一致でTPPを含め国際交渉に対する国会の意思を示したといえる。

◆広範な運動は継続

 こうした情勢変化に合わせ、JAグループが展開してきた「TPP交渉参加阻止1千万署名全国運動」については、4月末に一旦、仮集約することにした。集約状況を確認し、そのうえで署名運動の再開、署名を活用した要請などといった具体的な取り組みについては、政府の動向を注視しながら、改めて提起する方針とした。
 また、JA全中はTPPが世界の食料事情や環境などに与える影響分析を専門家に研究依頼しており、現在、その成果をとりまとめ中だが、それをもとにした学習会・シンポジウムの開催など広く国民に発信していく運動も今後、改めて提起するとしている。
 昨年末に決めた運動方針では「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク」を設立する方針で、今年1月からTPP参加によって影響を受けることが予想される個別業界団体への参加働きかけを行ってきたが、これについては継続させ、情勢に応じて意見交換会などを検討していく。

◆WTO交渉の状況

 一方、WTO交渉は2011年中の最終合意に向けて1月のWTO非公式閣僚会合で確認された4月下旬までの議長案の改訂版作成と7月までの大筋合意をめざした高級事務レベル会合が続けられている。 しかし、これまでの交渉では非農産品(NAMA)分野の市場アクセス改善などで、米国が新興国に対してさらなる譲歩を求めているのに対して、中国、インド、ブラジルなどが反発している構図は変わっていないという。
 しかし、こうした対立が解消されなくても、議長案改訂版が提示されるとの関係筋の見方がある。また、交渉が進展していない場合は、4月下旬にラミー事務局長が現状評価ペーパーを提起し交渉進展を促すのではないかとの見方もあるという。
 現状では、各国とも議長案改訂版の作成を断念していないとみられており、4月中旬に開催される予定の高級事務レベル会合の動向などを引き続き注視していく必要がある、JA全中では分析している。

(2011.04.08)