農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

今年度を「森林・林業再生元年」に  森林・林業白書

 4月に閣議決定した22年度森林・林業白書では、木材需要拡大に向けて「新たな木の文化」をめざす必要性などを指摘、「23年度を森林・林業再生に向けた元年とすることを報告している。

◆面的な取り組みで再生はかる

 現在の木材自給率は27.8%。これを10年後に50%とする「森林・林業再生プラン」を政府は昨年6月に閣議決定した新成長戦略に位置づけた。
 農水省はこれを受けて、面的なまとまりを持って森林を整備するよう間伐などの施業の集約化と低コストの路網整備を支援する「森林管理・環境保全直接支払い制度」を導入するなど、再生プランの具体化を進めている。
 白書ではこうした取り組みが本格的に実施される23年度を「森林・林業の再生元年」であると強調した。
 ただ、木材の需要は平成8年以降減少し、一人あたりの木材需要量は21年には、ピーク時の昭和48年の半分の0.5立方メートルまで落ち込んでいる。人口減少社会になって住宅着工件数や紙、板などの需要が大幅に増加することは見込めない。
 こうしたなかでも、木材の利用は快適な住環境づくりや、地域経済の活性化、さらには地球温暖化防止に貢献することを白書は強調、直接支払い制度で山元を支援すると同時に、木材の需要拡大をはかることが不可欠だと指摘した。

◆新たな需要拡大を

 その需要拡大策として、今回の白書で取り上げた新たな動きが公共建築物の木造化と木質バイオマスのエネルギー利用だ。
 公共建築物については、昭和25年に衆議院で「都市建築の不燃化の促進に関する決議」が採択され、官公庁などの建物は不燃構造とすることが盛り込まれた。戦後は火災によって都市建築に大きな被害が出ていたためだ。このため現在、建築物全体の木造率は36.1%だが、公共建築物は7.5%にとどまる。
 これを大きく見直したのが昨年5月に国会で成立し10月から施行されている「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」。今後は、可能な限り木造化・木質化をはかる方向に転換した。 白書では課題として低層の公共建築物をターゲットとした木造化、すべての建築物の内装の木質化、規模・構造の工夫によるコスト削減、発注者や設計者への普及啓発と技術者の育成などを挙げている。
 木質バイオマスのエネルギー利用では、石炭火力発電所でも混合利用が進んでいる。昨年末で全国16の石炭火力発電所が混合利用を実施、または計画しているという。
 また、経済産業省では再生可能エネルギーの全量買取制度を検討している。
 白書では今後の課題として未利用間伐材の低コスト供給、チップボイラーなど燃焼機器導入の初期費用の引き下げ、安定的なペレット供給体制の整備などを挙げている。
 需要拡大のための木材輸出促進の取り組みなども報告したほか、山村の活性化に向けた都市との交流や、森林資源を活用した新たなビジネスの創出による就業確保と定住促進について報告している。

 

(2011.05.06)