農政・農協ニュース

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震災復興を協同組合の視点で  国際協同組合デー記念中央集会

 2012国際協同組合年全国実行委員会と日本協同組合連絡協議会(JJC)は89回目を迎えた「国際協同組合デー」を記念して7月14日、都内・全労済ホールで「国際協同組合デー記念中央集会」を開いた。
 集会には約550人が参加。今年のテーマである「震災復興のために、協同組合に何ができるか」についてパネルディスカッションで話し合った。

JA全中・茂木守会長 開会のあいさつでJA全中の茂木守会長は「この集会が震災復興に協同組合の力をより発揮することにとどまらず、わが国の協同組合運動にとって意味あるものとなることを期待している」と述べた。
 また2012国際協同組合年全国実行委員会代表を務める経済評論家の内橋克人氏は、震災支援に政府の機能が果たされていないことを指摘。「人間が人間らしく生きられる社会をつくっていくのが協同組合の精神。東北の方々の忍耐強さに甘えて、国はなすべきことをなしていない。個人の力ではこの巨大な災害、膨大な被災者を助けることはできないからこそ、協同組経済評論家・内橋克人氏合が国のあり方に対して“正当な政府機能を発揮しろ”と迫り、被災地の方々に寄り添って日常を支えていくべきだ」として「日本の社会転換を実現するのは協同組合の力。力なきものの力をひとつにするのが協同組合である」と述べた。


◆新しい“公共”担う協同組合

 パネルディスカッションのコーディネーターを務めたのは千葉大学大学院教授の小林正弥氏。小林氏は冒頭、自己責任の「自助」と政府の援助である「公助」だけでなく、人々の助け合いである「共助」が必要だという「協同組合憲章」の理念を説明し、国家的な“公”ではなく民による新しい“公共”が重要であると提起した。


◆協同組合間連携の力再認識

「震災復興のために、協同組合に何ができるか」をテーマにパネルディスカッション JAいわて花巻代表理事専務の高橋勉氏、JFみやぎ専務理事の船渡隆平氏、福島県生協連会長の熊谷純一氏は震災後の被災地の状況を報告した。そのなかで高橋氏は、JA間の相互協力が地域支援に大きく貢献したことから、協同組合間連携の重要性の再認識と、さらなる連携体制の強化などをあげた。
 また、政府が復興会議で提言した水産特区構想についてJF全漁連常務理事の長屋信博氏は「漁業者の絆を分断させ漁業者の復興を遅らせることにつながるのではないか」、船渡氏からも「地域社会をどう構築していくかという議論が抜けた展開がされていると感じる。被災者のための復興というが空虚なものにしか聞こえない。震災以前の安定した生産活動が維持され、豊かな暮らしを確保することこそが本当の復興だ」と述べて政府の議論の問題点を指摘した。
 また熊谷氏は「風評被害で福島県の農産物は取引きが難しい状況にあるが、福島で生産されたものは福島の人が食べなければいけない」との考えから、生産者の顔や活動が見える人間的なつながりで「もっと大々的な産直事業を進めていくことが必要だ」と述べた。
 日本生協連専務理事の芳賀唯史氏は「被災地の農業・漁業者を全国の消費者が応援することが大事」だとして被災産地の農産物を全国の店舗で販売する取り組みを広げる「コーディネーター役を務めていきたい」とした。


◆もっと社会に開かれた組織に

 また芳賀氏は「生協が活動基盤にしている消費生活協同組合法には『組合員の生活の文化的経済的改善向上を図ることのみを目的とすること』と定められているが、これを機会に生協がもっと社会に開かれた活動を地域でやっていけるよう、法的な条件の整備にも取り組んでいかなければいけない」、JA全中常務理事の土屋博氏からも「日本の協同組合制度は組合員にサービスすることが基本となっているが、震災の取り組みでも見られたように、本来は組合員だけでなく広く地域社会へサービスを提供していくことが必要ではないか」と、より発展した協同組合にしていく必要性を述べた。
 最後に小林氏は、現代社会が抱えている多くの問題は、国家である「公」と民間企業である「私」が助け合いや公共を重視する「共」の考えを取り崩して進めてきた点にあるとして、漁業権をめぐる水産特区構想や原発をめぐる問題は「この『公』と『私』が癒着しながら起こった典型的な事例」だと指摘。今後は「共」を中心としていくことが重要で、それを理念とする協同組合のもとでこれからの国家や政治・経済を作っていくことが課題であり、めざすべき復興であるとまとめた。

(2011.07.19)