農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

クローズアップフードビジネス・中国農業の今――

 昨年1年間に日本に輸入された野菜は、生鮮・加工を合わせて約250万トンで前年に比べ14%増えた。今年の1月〜5月の輸入野菜は約119万トンで前年同期比16%の増となっている。今年の増加は東日本大震災の影響と思われがちだが、「冷凍ホウレンソウ」を除いて震災の影響は少ないというのが専門家の分析だ。
 その輸入野菜のほぼ半分(10年51%、今年5月までの49%)は中国産。かつての残留農薬問題や冷凍餃子事件などの印象から、中国産野菜にマイナスイメージを持っている人はまだ多い。しかし、中国最大の野菜産地山東省にある寿光市は、最先端の農業技術をもつ野菜産地であると同時に、中国でも有数な野菜集散地として世界から注目されているが、一部の専門家を除けばまだ日本ではあまり知られていない。
 今回は「近くて遠い国・中国」をより多く知ることはこれからの日本の野菜生産にとってもプラスになると考え、「人民中国」誌の記者・張春侠氏に寿光市の最新情報をレポートしてもらった。

世界のハイテク野菜栽培基地めざして


中国最大の野菜基地・山東省寿光市(じゅこうし)

中国最大の野菜基地・山東省寿光市(じゅこうし)◆「改革・開放」による経済大発展をベースに


 中国の山東省は昔から野菜生産で知られ、「山東大白菜」(サントウサイ)のふるさととして有名だ。「大白菜」は華北地域の冬の野菜として極めて貴重な存在だった。1980年代前半までは、首都・北京の厳冬期を前にした一大行事は、この「大白菜」を大量に買い込んで、半干しにし、ベランダの隅に積み上げる作業だった。こうして保存しながら、一冬、煮たり炒めたり、餃子の具にしたり、ほとんど唯一の冬の野菜として大切に使ったものだった。
 それがどうだろう。「改革・開放」がもたらした経済の大発展によって、北京に限らず、中国のどの都市でも、今では一年中、さまざまな野菜をスーパーで自由に買い求めることができるようになった。全国に高速道路網が張りめぐらされ、流通が格段に発達しただけではなく、各地に野菜の大生産基地が建設され、市場をにらんだ各種野菜の生産が、一年を通して、大規模に行われる時代になったのだ。

 

◆「中国の野菜の里」も最初は17のハウスから


 「中国の野菜の里」山東省・寿光市では、毎年、4月20日から5月20日まで「国際野菜科学技術博覧会」(菜博会)が開催されている。今年は第12回目で、国内外から3000を超す関係企業がブースを並べ、会期中1万人以上のバイヤーやビジネスマンが訪れて活発な商談が行われた。
 「菜博会」は年々規模が大きくなり、多くのハイテク栽培技術が展示されて、入場者を驚かせている。なぜ、寿光市でこのようなハイレベルの博覧会が開かれているのか。それは、寿光が中国最大の野菜生産基地であり、また中国最大の野菜集散地であるからにほかならない。
 寿光市は山東半島の中央北部に位置し、北は渤海に臨む。総面積は2072平方キロ。寿光が中国最大の野菜生産基地になる発端は、三元朱村で20年前に始められた「冬暖式大型ハウス」による野菜栽培だった(写真下)。
三元朱村の野菜栽培はこうした冬暖式大型ハウスで行われる 1989年、三元朱村の中国共産党支部書記・王楽義さんは遼寧省に赴き、当時開発されたばかりの冬暖式大型ハウスを使った野菜の栽培技術を学んだ。このハウスは、外気が零下25度以下にならない限り、厳冬期でも石炭や重油をたかずに野菜が栽培できる。
 故郷に戻った王さんは、村の16人の共産党員を率いて17棟の大型ハウスを建て、キュウリの栽培を始めた。この17棟から始まって、寿光は一歩また一歩と最新の栽培技術を取り入れ、その特色ある野菜栽培の道を歩んできたのだ。

(写真)三元朱村の野菜栽培はこうした冬暖式大型ハウスで行われる

 

◆報酬が3倍になった農業技術専門家


今年の「菜博会」では8つの展示パビリオンと4つの植栽温室が並んだ。中国各地と世界から多くの人々が訪れ、交流と商談が行われた。日本からの出展も 三元朱村の王万凱さんは今年56歳。大型ハウスでキュウリとニガウリ(ツルレイシ)を栽培しているが、農作業は奥さんと息子にまかせ、一年の大部分は農業技術員として中国の各地を忙しく駆け回る。これまでに新疆ウイグル自治区や内蒙古自治区、青海省や北京市などで野菜栽培の実地指導に当たってきた。2002年には1カ月の報酬は2000元だったが、今では3倍の6000元(約7万5000円)が支払われるという。
 17棟の冬暖式ハウスが建てられてから、寿光はずっとハウス野菜栽培のテストケースになってきた。農薬を極力使わずに、天敵を用いた虫害防除を行ったり、肥料に牛乳を用いたり、無土栽培を行ったりの科学技術イノベーション(刷新)を率先して取り入れてきたのだ。有機質無土栽培のハウスは現在、1.3平方キロにまで広がっている。

(写真)今年の「菜博会」では8つの展示パビリオンと4つの植栽温室が並んだ。中国各地と世界から多くの人々が訪れ、交流と商談が行われた。日本からの出展も



(続きは クローズアップフードビジネス・中国農業の今―世界のハイテク野菜栽培基地めざして で)

(2011.07.20)